越川&千々木が語る全日本男子バレーの今

田中夕子

ワールドリーグを前に、新たな一歩を刻むチームの「今」を語った越川(左)と千々木(右) 【スポーツナビ】

 バレーボール全日本男子は、日本バレー界初の外国人監督となったゲーリー・サトウ新監督のもと、新たな戦力も加わり、6月1日に開幕するワールドリーグで初陣を飾る。

 練習開始時、これまでは監督の前に選手が2列に整列し、その日のメニューを説明するところから始まっていたが、5月21日の公開練習では、選手に混ざって監督も一緒に円陣を組む。

「GO! JAPAN!」

 笑顔で手をたたき合い、練習に臨む選手たちの表情は明るく、笑顔も見える。
 リオデジャネイロ五輪へ向けて、新指揮官のもと、新たな一歩を刻むチームの「今」を、日本代表として12年目を迎えた越川優(サントリー)と、今季V・プレミアリーグで最優秀新人賞に輝いた、代表1年目の千々木(ちぢき)駿介(堺)が語る。

越川「監督のスタイルを自分で吸収したい」

越川はチーム始動から1週間が経過し、現状はまだ探り探りだが、練習は新鮮で楽しいと語った 【スポーツナビ】

――5月20日に代表候補が召集され、1週間が経過しました。チームの現状、ご自身の現状から教えて下さい。

越川 正直なところ、監督の方針はまだ大まかにしか聞いていないので、今はまだチームのシステムや、約束ごとなど探り探りの状態です。個人的には黒鷲旗(5月上旬開催)の前からけがをしていたので、まずはコンディションを上げることを優先しつつ、監督のスタイルを自分で吸収したいと思いながら練習しています。

千々木 僕はシニア(代表)の合宿が初めてなので楽しいです。みんなすごいプレーができる人ばかりなので、見ていて勉強になるし、今までやったことがないような早いテンポで練習が進んで行くので、新鮮味あふれる毎日です。ここからもっと詰めていくのは時間がかかると思いますが、このまま進んで行ったらどうなるだろう、と期待感がいっぱいです。

――スパイク、サーブレシーブなど単体の練習は少ないと聞きましたが、実際の練習は?

越川 ゲーム形式が多いですね。コンビに関しても、今はパイプ(セッター位置に近接するスロットから打つセカンド・テンポのバック・アタック)とクイックの組み合わせに重点を置いているので、そのタイミングの合わせ方を確認するために1〜2周コンビを合わせるぐらい。センターもサイドも、ネットの近くではなく、今までよりも少し下がった位置から攻撃に入るので、ミドルもサイドも、もっと言えばセッターもリベロも新鮮な刺激を受けていると思います。今までのコンビ練習ならば、その都度セッターに「もっとこうしてほしい」と言う時間がありましたが、今は流れの中で、スパイカーは次々打つから、セッターはそれに合わせてポンポントスを上げないといけない。練習自体は面白いし、新鮮ですが、その状況でお互いの要求を伝え合うのは大変だろうな、とも思います。

千々木 チームで主力として出ている中から、さらに選りすぐりのメンバーなので、バレー観もやってきたことも違う。(堺)ブレイザーズの選手が多いから、ブレイザーズの色を出せばいいというわけではないので、周りと合わせる能力が必要だと感じています。

細かいところにも行きわたるサトウ監督の指導

――お話にも出ましたが、クイックとパイプに重点を置いているそうですね。

越川 パイプを使おうという意識が、今まで以上に高くなりました。ただ、システムやタイミングが少し変わったぐらいで、新しい攻撃という意識ではないです。選択肢の1つとして、常にパイプが加わったという感じですね。

千々木 速さや位置に関しては、ある程度の指示はありますが、前後の関係や細かいことは各自に任せるという感じです。ただ、何か気になることがあれば練習を止めて、その都度言われます。何かを注意されるのかなと思うと「今のは良かった、ハイ解散」みたいな(笑)。

越川 そうそう。それで集合したの? と思うことも多々ある(笑)。誰かが良かった、誰かがダメだった、という時に、個々に伝えるだけでなく、全員に伝えることを大事にしているのは強く感じますね。

――サーブレシーブに関しては?

千々木 無駄を省けと言われます。僕は(レシーブの時に)一度ひじを曲げてから真っ直ぐ出していたのですが、「その動きは無駄だから、最初から手を組んだまま腕を前に出して、来たボールに合わせればいい」という感じです。世界のサーブには、そういう基礎が効くからと言われました。

越川 サーブレシーブをする選手全員に対して、共通の要求だよね。言っている意味は分かるし、確かだと思うけど、今までのやり方もそれぞれあるので、なかなか慣れない(笑)。

千々木 構える位置もそうですよね。相手が(サーブを)前に打ってきそうだと思っていても最初から前に出てしまうと「前に打つのがバレている」と気づかれてしまうから、一歩後ろで構えているのですが、監督からは「前に来ると思うなら、最初から前にいろ」と言われました。後ろに打たれたらどうするんだろうと思うんですけど(笑)。

越川 後ろも取れってことでしょ(笑)。すべてのプレーを考えてやらないといけないし、細かいところをすごく見ている監督ですね。フェイント1つにしても、「そこに落としたらリベロがいるから、フェイントするぐらいなら、セッターに取らせたほうがいい」とか、「常に相手が攻撃しづらいところに返せ」とか。とにかく意識づけは徹底しています。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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