本田不在の日本代表に必要な“Bプラン”=決定力向上の鍵を握る香川と東の起用法

清水英斗

主力の合流が遅れる日本、ブルガリア戦の位置づけは

本田の影響力が絶大な日本代表。ブルガリア戦では、本田不在のBプランの確立が求められる 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】

 6月4日にホームで行われるブラジルワールドカップ(W杯)最終予選のオーストラリア戦。日本は引き分け以上で本大会出場が確定する。

 決戦に先立って30日に行われるキリンチャレンジカップ2013、ブルガリア戦の最大の見どころは、やはり本田圭佑を欠くBプランの確立になるだろう。6月1日のロシアカップ決勝を終えてチームに合流する本田が、オーストラリア戦で万が一プレーできない場合、あるいはコンディション不良で満足なプレーができない場合、どのように戦うべきか。それを見出さなければならない。

 トップ下に君臨する本田の影響力はあまりにも大きい。キープ力があり、縦パスを引き出してさばくテクニックに優れ、遠めからのミドルシュートも打てる。さらにフィジカルの強さを生かしてクロスに飛び込むこともでき、セットプレーの空中戦でも攻守におけるキープレーヤーとなる。

いつから本田は唯一無二の存在になったのか

 うまい選手、強い選手、賢い選手はたくさんいるが、『うまくて強くて賢い』選手となると、ひとりで二役も三役も果たすことができる本田はやはり唯一無二の存在と言わざるを得ない。

 いつから、本田はこれほどの存在感を発する選手になったのだろう? 思い返せば2011年アジアカップのグループリーグ、ヨルダン戦やシリア戦では、むしろ本田のキープ力が足かせとなり、ボールがリズム良く回らず、チームは苦戦を続けた。ところが決勝トーナメントに入ると徐々に本田のプレーの質が変わった。中盤ではシンプルなバックパスで簡単に味方を使い、攻撃がスムーズに流れ始める。特に左サイドでは遠藤保仁、長友佑都、香川真司と絡みながら、何度もサイド突破を成功させた。まるで、ひとりで何でもやろうとしていた本田が、全力を尽くすエリアと、肩の力を抜くエリアを使い分け始めたような……。筆者はそのようなイメージを持った。それ以降、本田の存在感は日増しに大きくなっている。

緩急の『緩』がないために生まれる弊害

 27日に行われたトレーニングでは東慶悟がトップ下へ。翌28日はトップ下を必要としない3−4−3システムの確認を行った。どちらも目的は本田を欠くBプランの構築だろう。このBプランをブルガリア戦で成功させるためには何が必要か?

 3月に行われた国際親善試合のカナダ戦と、W杯予選のヨルダン戦では、本田不在により香川がトップ下で出場した。1−2で敗れたとはいえ、ヨルダン戦は決して悪い出来ではなかった。香川は相変わらず、すき間でボールを受けるのがうまく、競り合いを避けながら清武弘嗣とのコンビネーションでチャンスを量産。前田遼一、岡崎慎司らも惜しいシュートを放った。サッカーが判定で勝敗を決めるスポーツなら、間違いなく日本の判定勝ちになっていただろう。ザッケローニ監督も試合後には『決定力の欠如』を嘆いた。

 しかし、本田がトップ下に入る場合と、香川がトップ下に入る場合では、ゴール前に至る過程に大きな違いがある。ボールキープやバックパスで緩急を操る本田に比べると、香川がトップ下の場合はリズムが一本調子だ。まるでピッチ全体がゴール前のように、せわしなく、すき間を見つけてスピーディーなターンとコンビネーションで突破を仕掛けていく。その技術は見事だが、常に伸び切ったゴムのようでもある。緩急の『緩』がない。あまりにも縦に速いので、後方の味方との距離が離れ、攻撃の厚みも出しづらい。また、同じことを続けていると相手チームも慣れてしまう。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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