石川遼がつかんだ優勝への手応え
ゴルフ漬けで着実に力を蓄えていた今季序盤
シーズン序盤、石川はもがいていた。初戦となった「ヒュマナチャレンジ・クリントンファウンデーション」から3試合連続の予選落ち。3月末の「シェル・ヒューストンオープン」までの9試合で予選通過はわずかに3回で、ベストフィニッシュはWGCの裏開催となった「プエルトリコオープン」での39位タイ。日本での報道も、週を追うごとに寂しいものとなっていった。
しかし、石川は着実に力を蓄えていた。「日本だとやりたいことができちゃうから・・・」と石川は言う。「時間が早く感じます。自宅に居たら、家族と遊んだりして、あまりゴルフはやらないかな。でも、こっちにいたらゴルフだけ。道も分からないし、行動範囲はすごく狭い」と、まさにゴルフ漬けの生活を送っていたのだ。
5年連続5度目の出場となった4月の「マスターズ」で今季4度目となる予選通過を果たすと、翌週の「RBCヘリテージ」では3日目を終えて6位タイと躍進。初めてのコースで火曜日に1ラウンドし、水曜日のプロアマには出場せず。それでも、上位に顔を出せたことで石川は自信を深めた。
「悪いなりに粘れている」という今年初めての感覚
再び1週間のオフを強いられた「HPバイロンネルソン選手権」の開幕前、石川は拠点のあるフロリダ州オーランドで、ウッドを使わずに練習ラウンドを行った。その意図は明確だ。「パー4は全部アイアンでティショットして、2打目が長いクラブになってもそれでやる。セカンドの距離は残るけど、そこからミドルアイアンを打つ選手と同じ精度で打っていく。たとえロングパットが残っても1センチでも遠くから入れるというパッティングをする。それが自分の飛距離で勝つために必要というのが見えてきた」。トーナメントの練習場でも、数年前に尾崎将司に教わったというバンカーからのフルショット練習を、スチールシャフトで一番長いクラブ、つまりアイアンで最も難易度の高い4Iで繰り返す石川の姿があった。
満足いかなくてもそれなりのスコア
最終日も強風の中で「67」。今季決勝2ラウンド続けてアンダーパーをマークしたのは初めてのこと。通算10アンダーは今季ベストの10位タイ。だが、「順位以上に手応えを感じているかもしれない」と、石川はさらなる充実感を滲ませる。「カットラインとか優勝スコアが、本能的にこれくらいというのが当たってきている。今週、優勝は15から20(アンダー)くらいかなと思って、それを目指してやろうと思っていた。これだけ風が吹いているけど、まだ15(アンダー)もいっていない。良いゴルフを4日間できれば全然チャンスはあったと思う」と言葉にも力がこもる。その時点で優勝争いをしていたのはベ・サンムン。良く知る戦友を横目に眺めながら「もうちょっとだと思いますね」と、額の汗を輝かせた。
翌週に行われた「クラウンプラザインビテーショナル」でも予選通過を果たし、これで5戦連続で4日間を戦い続けた石川遼。“もうちょっと”というその時は、確実に近づいている。
<了>
(文・今岡涼太)
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