大石達也、クローザー奪還への試行錯誤

中島大輔

監督の評価「信頼感はないよ。期待感はあるけど」

斎藤佑樹世代のプロ3年目、大石達也。試行錯誤を繰り返し、前に前に歩んでいる 【写真は共同】

 5月22日、西武の大石達也がクローザーから中継ぎに配置転換されて初戦となった広島戦の前、渡辺久信監督は彼への評価をはっきりと口にした。
「上体の力が抜けたり、下半身を上手く使えるようになって体重移動をできているけど、内容は良かったり、悪かったり、だからね。信頼感はないよ。期待感はあるけど。クローザーにしたのは後ろを投げて、勉強する部分があると思ったから」

 斎藤佑樹世代が注目を集めた2010年ドラフト会議で最多の6球団に指名された大石は、プロ入り3年目の今季、開幕からクローザーを任された。先発に挑戦して登板なしに終わった1年目、中継ぎとして24試合に投げた2年目と比べ、改善されたのがストレートだ。シーズンオフからフォーム修正に着手し、「初速と終速の差が少ない」と言われるキレ味が増した。
 5月20日の阪神戦の前、大石はこう話している。
「去年はフォームがほどけるのが早かった。ほどけるというのは体重移動のことです。下半身が開いたりして、力が抜けていく感じがしました。今年は粘れています」
 現在のストレートの平均球速は140キロ前後。早大時代に150キロを連発していた頃と比べ、10キロ以上も遅い。
 それでもプロの打者を抑えられる理由について、捕手の炭谷銀仁朗はこう説明する。
「テークバックが小さいから、タイミングを取りづらいんだと思います。球速は140キロくらいだけど、キレもある。ファウルや空振りを取れるなど、悪いときでもそれなりにできますし。今年は真っすぐが力強くなりましたね」

 今季2敗目を喫した5月9日までの13試合のうち、5試合で失点している。最終回を任されてきたが、「守護神」と形容するには実績、安定感ともに足りない。開幕から先発陣が好調だったこともあり、1点差での登板機会もなかった。

通告された中継ぎへの配置転換

 そんななか、クローザーとして真価の問われる場面はくしくも神宮球場でやって来た。

「変な感じがしました。ビジターだけど、マウンドは懐かしい感じがして」
 5月14日、交流戦初戦のヤクルト戦。9回裏、4対3の場面で登場した大石は、先頭打者にウラディミール・バレンティンを迎える。
「いつも一発を気にしてフォアボールを出していたので、ストライク先行を意識しました。追い込んでからのフォークは落ちなかったけど、外の球を振ってくれましたね。1点差は初めてだったので、何とか抑えられて良かったです」
 バレンティンを空振り三振に斬って取ると、この回を無失点に抑えて今季6セーブ目を挙げた。先頭打者を出塁させてからの失点を繰り返していた右腕は、大学時代に躍動した神宮のマウンドでクローザーの仕事を果たした。

 しかし、4日後の巨人戦では1対1の延長10回から登板し、サヨナラ負けを喫する。翌日の阪神戦の前、中継ぎへの配置転換を通告された。
 大石自身、開幕からストレートの出来にもどかしさを感じていた。
「良いときは良いんですけど、納得いくかとなるとまだですね。日に日に良くなっている感じはありますが、もうちょっと上のレベルを目指しているので。リリースのときに、力が伝わっていないような気がします」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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