米国シリーズは注目の跳躍陣が登場=ダイヤモンドリーグ第3、4戦展望
元世界王者・ブラシッチ、1年8カ月ぶりに実戦へ
リハビリとトレーニングで12年シーズンを棒に振ったブラシッチが復帰戦に臨む 【Getty Images】
だが、それ以前はブラシッチの時代だった。北京五輪こそ同記録で銀メダルと敗れたが、07年大阪、09年ベルリンと世界陸上で連続金メダル。10年のダイヤモンドリーグでは7戦無敗を誇り(年間32点の史上最多得点)、IAAFの年間最優秀選手にも選ばれた。 09年には2メートル08と、世界記録に1センチと迫る歴代2位をクリアしている。192センチと体格にも恵まれ、世界記録更新の期待をかけられていた。
ところが11年は徐々に記録が低下し、前年は16試合あった2メートル台を2試合でしか跳べなかった。世界陸上テグ大会で2メートル03のシーズンベストを跳んだが、同記録でチチェロワに敗れた。アキレスけんに故障を抱え始めたのが原因で、12年1月には手術に踏み切らぜるを得なかった。11年9月のダイヤモンドリーグ・ブリュッセル大会を最後に、12年シーズンはすべての試合を欠場した。
モデルもこなすなど競技以外でも活躍する選手。そのまま引退しても不思議ではなかったが、ブラシッチの陸上への情熱が冷めることはなかった。年齢的には29歳で、30歳のチチェロワよりも若い。
「この6カ月間、リハビリとトレーニングが本当に順調にできました。大きな試合で競技をすることを愛しているし、それが私の一番のモチベーションでした」
4月の時点でインタビューにこう答えていたブラシッチ。復帰戦で目標とする記録については名言しなかったが、2メートル00をクリアできれば世界のトップレベルに復帰した証となる。1年8カ月のブランクを本当に克服できるのか? 美人ジャンパーの今季に懸ける思いがピットに表れる。
米国、400メートル王国の意地を見せられるか?
それに対し米国勢は決勝に1人も進めない惨状に。エースのラショーン・メリット(北京五輪金メダリスト)が直前のダイヤモンドリーグ・モナコ大会で脚を痛め、ロンドン五輪は予選を途中棄権。マッケイとブライション・ネラムは準決勝落ちを喫した。
“異変”は前年の世界陸上テグ大会から始まっていた。当時ジュニア選手だったジェームズが優勝し、メリットが0.03秒差の2位。惨敗とはならなかったが、その年の全米選手権優勝者のマッケイはまさかの予選落ちだった。そのマッケイがロンドン五輪で少しの奮起さえすれば、決勝進出ゼロという最悪のシナリオは避けられたはずだった。
流れは1600メートルリレーにも続き、米国ロングスプリントチームはバハマに敗れて銀メダル。この種目でも、1位フィニッシュしながらドーピング違反者が出て失格となったシドニー五輪を除けば、1984年のロス五輪から金メダルを逃したことはなかった。
そして13年シーズン。ニューヨーク大会に五輪入賞者はケビン・ボルリー(ベルギー)1人しか出場しない。そこでマッケイがしっかりと優勝できるのか。地元ファンにとってはドキドキもののレースとなるだろう。
ロンドン五輪1600メートルリレーのマッケイは、3走で出場して先行するバハマを200メートルで抜き去った(米国は4走で逆転された)。そのときのラップは43秒66。マッケイの気迫が現れた素晴らしい走りだった。期待はできる選手である。
<了>
Written by 寺田辰朗
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