ホンダF1復帰、伊東社長「技術を結集」=15年からマクラーレンにエンジン供給

スポーツナビ

伊東社長「日本全体が元気になってくれれば」

――伊東社長、量産車からF1のレースへの技術供給の比率についてはどのくらいか。また、日本の技術力を示す良いチャンスだが、これを機会に日本をどのように元気にしたいと考えているか

伊東 量産車からレースへどのくらいの技術供給がいくかというのは、非常に難しい質問で答えようがないところです。ただ、量産車のハイブリットに関しては、相当幅広くやっていて、もうじきいろいろなタイプの車が販売されていきます。ここに至るまでに量産車における信頼性、燃費効果、走りの楽しさに関しては積み重ねてきたノウハウがあります。このノウハウをレースに役立てるということは、非常に関心を持ったテーマです。

 また、レースからという点に関しては、ダウンサイジングターボから改正するという技術は、間違いなくこれから量産車にも影響を与えていくと私も期待しています。かねてよりF1においても効率という軸が出て、技術進化が大きく測れるときは、十分にチャレンジする価値があるし、積極的にそこに加わっていくことでレースも楽しみにしたいです。そして、量産車にも技術を波及していきたいと思っています。

 ご質問にあった日本への貢献という点では、我々が得意としている技術の分野であると思いますし、F1に参加することによって日本全体が元気になってくれればと思っています。

――ウィットマーシュCEO、日本の技術が優れているとおっしゃっていたが、どういう期待をしているのか

ウィットマーシュ ホンダにどういう期待をしているかという問いに対しては、確かにホンダはエンジニアリングに関して大変卓越した知識を持っている。そして技術に対する思い入れというものは、相当強いものがあると私も感じている。

 そして最近、ホンダといろいろなコミュニケーションをさせてもらい、真の意味でのモーターレースへの熱意というものを再度確認することができた。以前F1に参戦していた時も、私自身関わらせてもらったが、そのときにも同じような印象を持っていた。

 ご存じのようにF1における昨今は、さらなる低燃費化が求められていて、それは社会の一つの流れである。残念ながら、F1の世界においてそれを採用するスピードは少し遅かったのではないかというのが私見だ。今、社会が求めている車というのは低燃費で、社会に優しいものだ。それを実現するための技術をホンダは持っている。

 例えばダウンサイズされた過給エンジン、ハイブリットの構成要素についてがあてはまる。そして、それらの技術に関してホンダは卓越している。そういった意味でもホンダに対して高い期待をしている。私がマクラーレンに身を置いてから、今回の“旅路”というのは最もわくわくする一つの出来事となるはずだと思っている。両者のパートナーシップのさらなる発展を楽しみにしている。

新井専務「エコ車と同じようなコンセプト」

技術系の責任者である新井専務は、環境も考えた高度なエンジン開発に関して、並々ならぬ意欲を見せた 【スポーツナビ】

――与えられたエンジンを効率良く燃やすということに関しては、エコエンジンもレーシングエンジンでも同じだと思うが、その点に関してどのように思っているのか

新井 エコエンジンとレーシングエンジンの効率に関しては、全くその通りだと思います。今回の新しいF1のレギュレーションというのは、どれだけ少ないガソリンでどれだけ速く走るかということで、まさしく環境と性能を両立させる意味では、環境を考えたエコ車と同じようなコンセプトだと理解しています。

 ただ、質力と効率を一番高いところに持っていかなければならないので、開発としては、非常に難易度が高く、チャレンジングな開発になります。

――社員の士気が上がっているということだが、F1参戦を機にどう変わっていくか

伊東 F1をやっているから入るという人は最近は少ないのではないか。面白い会社、何かわくわくする会社、ないしは日本全体がそういう雰囲気に持っていかなければいけない。そして、持っていきたいと私も考えています。これからF1の活動を通じて、そういう企業活動に参加したいという若い人々が増えることを、切に願っています。

――参戦にあたるコスト面に関してはどれくらいか。また、参戦に関する勝算については。チャレンジだとは思うがどのくらいの結果で満足するのか。また、参戦するまでに社内でどのような経緯があったか

伊東 費用に関しては……それは言えないですね(笑)。別に隠したいわけではないですが、言えるような内容ではないのでご容赦願いたいです。まず、何に期待して参戦したかというと、やっぱり勝つこと。レースは1番になることに大きな意味があります。それはこれまでF1の活動を通じてずっと味わってきたこと。歴史、経験を踏まえて考えるとやはり勝たなければならない。今回はそれを相当強く意識しながら活動を続けたいと思います。

 今回ここに至るまでの経緯に関しては、やはりトントン拍子に事が進んだわけではなかった。私もいろいろなところで勉強して、そして今も勉強の真っ最中です。ようやくこうやって発表の場までこぎつけることができましたが、タイミング的にも内容的にも素晴らしいと考えているので、私は非常に喜んでいます。

ウィットマーシュCEO「ホンダと素晴らしい関係を」

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――伊東社長、前回の撤退に関してどのように総括しているのか。そして、その上で今回の参戦は何がどう違うのか。また社長として、会社としてどのような覚悟でF1に臨むのか。もう一点は取締役会の承認は全員得られたのか

伊東 第3期参戦に関する総括については、いろいろな観点がありますが、自分なりの見方をすると、F1でエンジンだけでなく、全体をマネジメントするということはとても大変なことでした。それが本当に正直な感想です。我々はエンジンは得意です。ただ、F1で勝つためには最高出力のエンジン、とても優れた車体、それを運転する有能なドライバー、さらにそれらを支える素晴らしいメカニック。全体をオーガナイズする監督。そのすべてが一流で、全部が最高の状態でないと勝てないという印象を私は持っています。

 そういった意味では、第3期はチャレンジに関しては最高だったが、実力という意味では車体もそうだし、チームを運営するというこについてもっと謙虚に学ぶ必要性がありました。ただ、エンジン技術に関しては、負けることはないと自負しています。よって今回のホンダとマクラーレンの共同参戦というのは、理想の参戦形態であると考えています。得意領域を持ち合いながら、勝利を目指していくというのが、私の考える理想です。そして、長く続けていきたいと思っています。

――ウィットマーシュ氏、14年まではメルセデスと組むと思うが、その辺の関係性については

ウィットマーシュ F1というのは大変チャレンジングなレーシングスポーツだ。商業的にも、技術的にもエイジングスポーツとしても、パートナーシップのマネジメントに関しても、大変厳しいものだ。

 現在のパートナーとももちろん、誠意を持って接していくし、14年までは今まで通りやっていきたい。今後の我が社の計画についてもパートナーも理解してくれている。よって、今後はプロとして、今まで通り頑張っていきたいし、その後はホンダと素晴らしい関係を築いていきたい。 

<了>

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