「人魚になれる」水中最速競技、フィンスイミングの魅力

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普及に向けて続く努力「好きだからこそ広めたい」

モノフィンを履き、空気ボンベを手に泳ぐ「イマージョン」のレースに臨む選手ら 【スポーツナビ】

 とはいえ、マイナー競技ゆえに、競技を続ける上での苦労は少なくない。大きな問題の1つが、練習場所や時間が限られていることだ。選手はクラブチームに参加したり愛好者同士が集まるなどして活動しているが、プールでは水泳や遊泳が優先されるため、フィンの使用が認められるわずかな時間を利用して練習しているという。競技歴25年になる男性などは、「練習のつもりで大会に出ていた時期もある。練習なので、種目も長い距離のものばかり出ていた」こともあったというから驚きだ。

 また、とっつきにくさを指摘する人もいる。モノフィンは安いもので1枚4万円弱。初期投資がこれ以上かかるスポーツはたくさんあるが、ある指導者は「水着とキャップ、ゴーグルだけで始められる水泳とどうしても比較されてしまう」とこぼす。また、野球やサッカーといったメジャーな競技のように、クラブチームも多くはない。興味を持ってフィンスイミングをやってみたいと思っても、なかなか気軽に始められないのが現状だ。

 それでも関係者は、フィンスイミングの普及を目指して積極的に活動を続けている。日本トップレベルの選手たちも体験会を開き、フィンスイミングの魅力を伝える役割を果たしている。また、ある大学生のクラブでは、競技を極めると同時にインストラクター資格の取得にも力を入れている。メンバーの一人は「目標は日本代表になること。記録も狙うが、好きだからこそ、フィンスイミングを広めたいという思いがある」と力を込めて語ってくれた。

藤巻に憧れてフィンスイマーに……

 そんな中、思わぬ追い風となっているのが“藤巻効果”だ。2000年の世界選手権7位入賞で、現在はフィンスイミングスクール「SPLASH」を主宰する堀内直氏は、「藤巻さんをテレビで見てやりたいという子がたくさん入ってきた。藤巻さんみたいになりたいという感じなんでしょうね」と、未来の女性フィンスイマーの増加を喜ぶ。スターのスーパープレーを見てサッカー選手を志す子どもたちがいるように、フィンスイミングでも、憧れの選手の存在は、競技を続ける大きなモチベーションとなっているようだ。
 藤巻もまた、自身がテレビに出演することで「『フィンスイミングって聞いたことがある』という人が増えてきた」と認知度アップを実感し、「競技人口が増えたら、どんどん楽しくなると思う。そういう(普及という)面でも頑張りたい」と意気込む。

「このスピード感は見るだけじゃ分からない。ぜひ一度体験してほしい」と関係者は口をそろえる。それは「一度体験したら病みつきになること間違いなし!」という自信を感じさせる言いっぷりだ。ただ泳ぐだけでは決して得ることのできない、フィンスイミングだからこその感覚を、より多くの人に味わってもらいたい――関係者の努力は、これからも続く。

<了>

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