高橋由・清水が語る松井秀喜“強さ”の秘密

ベースボール・タイムズ

2002年、日本一に輝いた際、「4番・松井」(中央左)を1番、3番打者としてともに戦った清水(右端)と高橋(中央右) 【写真は共同】

 2013年5月5日、東京ドームで長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督と昨年限りで現役を引退した松井秀喜の国民栄誉賞の授与式、および松井氏の現役引退セレモニーが実施される。
 この歴史的行事を前に、日米通算20年の現役生活に別れを告げ、自らの恩師とともに38歳で国民栄誉賞を受賞する“ゴジラ”の魅力を、松井の巨人時代を知る高橋由伸、清水隆行という旧友2人の視点から改めて探り、その足跡を振り返りたい。

高橋由「とにかく“強い”選手」

高橋は、松井は「とにかく強い選手」だったと振り返る 【ベースボール・タイムズ】

「デカかったですね。とても1つ上の年齢には見えなかった」
 プロ入り後に初めて“ゴジラ”と顔を合わせた時のことを、高橋由伸は笑いながら振り返った。
 学年は松井よりも1つ下。高校時代に直接対戦したことはなかったが、「甲子園でのホームランも5打席連続敬遠もテレビで見ていましたよ」と高橋は当然のように話す。さらに「開会式の時は同じ空間にいて、当時から一人だけ有名でしたから、『あぁ、あれが松井かぁ』って思いながら見ていましたね」と懐かしむ。

 その松井が星稜高からドラフト1位で巨人入りしてから遅れること5年、高橋は慶大から巨人に入団した。その時、すでに松井はプロ5年間で通算128本塁打をマーク。96年に38本塁打、翌97年にも37本塁打を放つなど、球界を代表するスラッガーの地位を完全に確立していた。
「ひとことで言うと“強い”ですね。精神的にも肉体的にも、とにかく強い選手だった。バッティングでは、とにかく遠くに飛ばす力がすごかった。それが良い時でも悪い時でも変わらない。メンタル面も技術面もなかなか崩れない。そういう強さを持った選手でしたね」

 その後、『3番・高橋由伸、4番・松井秀喜、5番・清原和博』と最強のクリーンアップを形成。エース・上原浩治の働きもあって、巨人は00年、02年と2度の日本一を達成。高橋は、“ゴジラ”の存在感を背中で感じながら5年の時を過ごした。
「当時は個性派がそろっていましたからね。(松井が)真面目か? と言われれば、そうではないです。どっちかと言えば真面目かな? というぐらいですよ(笑)。普段は野球の話はあんまりしなかったかな。ライバルだとは思っていなかったですし、それよりも後ろに松井さんがいたから僕は伸び伸びと自由に打てていたのかなと思う。相手投手からしたら、どっちかと言ったら僕と勝負した方が良いわけですからね」

「引退することが一番想像つかなかった」

 02年のオフ、松井は大リーグ・ヤンキースへの移籍を決断するが、「正直、『まさか!?』という感じに近かった。『ホントかよ!?』って思った」と高橋は言う。それから数日後、高橋の携帯電話が鳴る。メジャー挑戦への意気込みかと思いきや、松井が2年間務めた選手会長の引き継ぎの連絡だったと高橋は笑って振り返る。無理に感傷的になることはなかった。その後、松井から受け継いだ選手会長を5年間も務めた高橋は、メジャーリーガーとなった“GODZILLA”の姿を他の日本人と同じようにテレビ画面を通して追いかけた。
「何か変な感じだった。『あれ?これって一緒にやっていた人なのかな?』とは思いましたね。向こうに行ってからは、連絡は年に1回するかしないか。『日本に帰ったらご飯でも』って約束はするんですけど、実際は忙しくて『また今度』ってことが多かったですね。メジャーリーガーになったから変わったってところは特になかったと思いますよ」

 そして昨年12月、松井はメジャーでの10年間の現役生活を終え、日米通算20年に渡るプロ野球人生からの引退を発表した。38歳という年齢を考えれば、致し方ない面はあるだろう。だが、まだ実感が沸かない。高橋はまだ、信じられない。
「けがもあったし、年齢を考えれば引退というのが自然な流れなんでしょうけど、それでも想像できなかったですね。引退することが一番想像つかなかった選手。まだまだやれるとかそういうのではなくて、『あぁ、松井秀喜も引退するんだ……』という感じ。野球選手としての松井秀喜しか想像つかないんですよ」

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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