松山英樹が持つ石川遼と対照的な“すごみ”

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語るより今何をやるかが大事

最終日、16番でバーディーを決めガッツポーズする、通算18アンダーで優勝した松山英樹 【共同】

「目標はないですね。とりあえず1戦1戦、1打1打やっていけば、結果もついてくるのかなって」

 国内男子ツアー第2戦「つるやオープン」最終日、観るものを魅了する終盤の4連続バーディでデービッド・オーを突き放し、プロ転向後の初勝利を史上最短2試合目で掴んだ松山英樹だったが、優勝会見で今後の目標を聞かれても、胸に秘めた大きな野望を語ることはなかった。

“20歳でマスターズ優勝”という金看板を掲げ、じょう舌な言葉でメディアやファンの心をがっちり掴んだ石川遼とは対照的に、この男は静ひつを好む。尾崎将司がエージシュートを達成した翌日、その感想を問われた松山は「何を語れば良いんですか?」と戸惑いを見せ、ショートパットに苦しんだ3日目は「外したんだからしょうがない」と、記者に言葉を継がせず、それ以上質問がないとみるやガッと席を立ち、足早にクラブハウスを抜け、パターを掴むとすぐにパッティンググリーンで1メートルのパットを打ち始めた。

 夢や目標はもちろんある。だけど、語るよりも今何をやるかの方が大事。松山の全身が、そう言葉を発しているようだ。

“勝負強さ”溢れるプレーで数々のタイトル奪取

 明徳義塾高校3年時に、日本ジュニアを制した松山は、それ以降も数々のタイトルをその手中に収めてきた。2010年10月にアジアアマチュア選手権を制して初のマスターズ出場を決めると、翌週の日本オープンでは、一時は首位に1打差に迫る3位タイでローアマチュアを獲得。

 翌年、その才能はさらに輝きを増す。初舞台となったオーガスタでは、日本人史上初のローアマチュアを獲得し、ディフェンディングチャンピオンとして迎えた10月のアジアアマチュア選手権では“勝ちにいって”の大会2連覇。11月には国内ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上3人目のアマチュア優勝という快挙だ。

“神懸かっている”印象を与える石川のプレーに対し、“勝負強さ”溢れる松山のプレー。無言のすごみが、その重量感を増長する。趣味のボーリングでも、280オーバーを記録するというから、やはりただものではない。

シンプルな目標に向けて一歩一歩前進

 プロ転向時に語ったビジョンは、「メジャーで勝ちたい」、「世界ランキングを50位以内に上げたい」というものだった。だが、ルーキーイヤーの今年、初めてのコース、初めての大会、初めてのツアー転戦が待っている。経験したことのないものを、無理に想像することはしない。「わからないっす」という言葉は、他の選手の会見で聞くことは少ないが、松山にとっては常套句だ。

 それでも、「つるやオープン」の優勝で、世界ランキングは一気に51ランク上がって108位。石川遼を抜いて、日本人2位へと上昇した。既に今年の全英オープンの出場権は掴んでいる。今後は全米オープンの予選会にも出場し、全英以降の国内男子ツアーの空き週には、海外ツアーに参戦する計画もある。

 10年、全英オープンの前週に石川は欧州ツアーのスコティッシュオープンに出場した。今年もスケジュール的に出場は可能だが、松山は即座にその可能性を否定した。「そんな余裕はないっすよ。せっかくの全英オープンなんだから、コースの下見もしたいし」。無駄をそぎ落とし、シンプルな目標に向けて一歩一歩前進する。松山の力強さは、そんな朴訥さと表裏一体と言えるだろう。

(文・今岡涼太)
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