メダル獲得へ――木崎良子の努力=世界陸上女子マラソン

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“惨敗”続きの女子…野口、福士、木崎が代表に

8月に行われる世界陸上モスクワ大会の女子マラソン代表に選出された木崎 【スポーツナビ】

 8月に行われる世界陸上モスクワ大会のマラソン代表が25日に発表された。男子は“公務員ランナー”川内優輝(埼玉県庁)のほか、ロンドン五輪で6位入賞を果たした中本健太郎(安川電機)、昨年12月の福岡国際マラソンで日本人1位になった堀端宏行(旭化成)ら選考レースで2時間8分台の5人が順当に選ばれた。

 一方、11年世界陸上テグ大会、12年ロンドン五輪と“惨敗”が続いた女子は、「入賞を狙えるレベルでないと選考されない」という引き締めの意味を込め、最大5枠あった代表権を3人に絞った。日本陸上連盟の尾縣貢専務理事は「(世界陸上では)もう少し高いところでマラソンがされることを祈る」と女子ランナーの奮起に期待する。

 その中で選ばれたメンバーが、度重なるけがからの復活を果たしたアテネ五輪金メダリスト・野口みずき(シスメックス)、“トラックの女王”として日本女子長距離界をけん引してきた福士加代子(ワコール)、そして今回の選考レースで唯一派遣設定記録をクリアした木崎良子(ダイハツ)だ。

バランス矯正で疲れない走りに

木崎は今年3月の名古屋ウィメンズで野口(左)らを振り切って、2時間23分34秒で優勝した 【写真は共同】

 ロンドン五輪代表として初めて世界の舞台でマラソンに挑戦した木崎。しかし、「スタートラインに立った時、自信がなかった」と完全に気持ちで負けていた。その結果、日本人選手の中ではトップながら入賞には程遠い16位。特にペースの上げ下げが激しいレース展開について行くことができず、それを最大の反省点に挙げている。

「反省を生かすには早い方がいいと思い、(世界陸上の代表を)狙える時に狙っておこう」と気持ちを切り替え、五輪後は自分の弱点の補強、特に左右のバランスの矯正を行った。
「今まで以上に補強トレーニングをしてきた。ほかのチームに比べて練習量が少ないので、本練習のあと60分走って筋肉をほぐしたりして距離を稼いだりした」と、日々のトレーニングにプラスアルファを加えた。左右のバランスを良くするためには「生活の中で箸を左手で使ったりして左右均等な力になるようにしてきた。最初はつかめなくて、箸で食べ物を刺していたけど、1カ月もしたら慣れた。今では普通に左手で食べられる。麺類はまだ若干難しいけど」と笑うが、生活習慣でさえ弱点補強の訓練の場に変えてきた。

 その成果が実証されたのが3月の名古屋ウィメンズだった。序盤からとばす野口をマークし、最後のラストスパートで野口を振り切る。結果は自己ベストを3分近く縮める2時間23分34秒で優勝した。
 元々1万メートルで実績を残していた木崎にとって、スパート時のスピードこそが持ち味となる。ただフルマラソンで戦う場合、スタミナ不足から最後までその“武器”を残すことができていなかった。そのため日々のトレーニングでバランスを矯正し、「まっすぐ地面を蹴れることで左右対称に進み、推進力が上がった。その結果、名古屋の時は最後まで疲れにくく、足に負担がかからなかったので楽に走れるようになった」と特訓の成果を語っている。

2時間20分台で走れる力が必要

 ロンドン五輪の経験を糧に、日々の努力を繰り返すことで、木崎は今回の代表権を獲得した。世界陸上での目標は「最低限、ロンドンで成し遂げられなかった入賞」と言葉は控えめだ。しかし、「最低でも自分のベストを出さないとメダル圏内には行けないだろうし、力的には(2時間)20分台で走らないといけないなと思う」と、しっかりメダル争いも視野に入れている。

 木崎の言う2時間20分台とは、4月21日に行われたロンドンマラソンの優勝タイム。ケニアのプリスカ・ジェプトゥーが出した2時間20分15秒が今季の女子マラソンベストタイムとなるが、「ロンドンマラソンのペース変動を見ていると、ハーフに行くまでに(5キロのラップタイムが)16分台一ケタにならないと20分台で走れない。それに後半ペースが上がるレースをしているので、スタミナもつけないといけない」と、速いスピードについていく走力と、最後まで粘る足を作ることを、モスクワでメダル争いをする必須要素だと挙げている。

 本番まで約4カ月。低迷する日本女子マラソン界の救世主となるために、木崎は「1秒でも早くゴールする」ために、日々の積み重ねを繰り返し、モスクワでのメダル獲得を目指す。

<了>
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