ソチ五輪で問われるチームジャパンの結束=合同研修会に真央、沙羅ら代表候補が参加

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異分野から競技に臨む心構えを学ぶ

宇宙飛行士・野口氏の講演に選手たちは興味津々。競技に通じる言葉も多くあった 【スポーツナビ】

 競技とは全く関係ない異分野からゲストを招いて、講演してもらったのもこの研修会の特徴だ。これは人間性の向上こそがアスリートとしてのレベルをさらにアップさせるという考えが根底にある。2日目には宇宙飛行士の野口聡一氏が登場。宇宙に渡るまでの過程や宇宙飛行士に求められる資質などを説明した。野口氏は競技に通じる言葉も残しており、選手たちも感銘を受けていたようだ。

「印象に残っているのは野口さんの『Slower is faster』(急がば回れ)という言葉。すごく単純だけど、奥が深いなと感じた」(伊藤みき/スキー・フリースタイル・モーグル)

「野口さんの『ライバルを蹴落とすんじゃなくて、自分がそのレベルに達するようにする』という言葉は、競技に臨む心構えになった」(小平奈緒/スピードスケート)

 宇宙飛行士は各国の優秀な人物が集う狭き門。シャトルに乗るのはその中でも選ばれた人間のみとなる。当然ながら一緒に訓練する者とはライバル関係になるわけだが、野口氏は「他人を蹴落とそうという気持ちはなく、あくまで自分がそのレベルに達することをまず考える」と話す。さらに「『Slower is faster』の気持ちで、焦らず地道に訓練を続けることが、自分のレベルをアップさせる近道になるという考えでやっている」と訓練に臨む心構えを話していた。

 最終日となる3日目には「夢の実現を加速させる脳の使い方」と称して、コーディネーターの小田全宏氏をゲストスピーカーに迎えた。小田氏は東京大学法学部を卒業後、松下政経塾に入塾し、松下幸之助氏の下で人間教育、人材育成を研究。1991年、株式会社ルネッサンス・ユニバーシティを設立し、その後多くの企業で「陽転思考」を題材にした講演や人材教育を行っている。陽転思考とは「太陽のように明るく物事を思考する」という考えのことで、「『難しい』『無理』といったら物事は全部できなくなってしまう。最後の紙一重は『意識』の問題ということを覚えてほしい。難しい=これはやりがいがある、という思考に変えるべき」と小田氏は熱弁を振るった。

 バンクーバー五輪で銅メダルを獲得した加藤条治(スピードスケート)は「僕は何かやるにしても無理だなと思うこともけっこうある。だから小田さんの言葉はぐさりときた。今後はそういう思考を持つように意識したいと思う」と語っている。

チームで戦わない限り、ソチ五輪での成功はない

渡部暁斗(左)と談笑する上村(右)。多くの選手と交流したことで、チームジャパンとして一緒に戦う気持ちが芽生えたようだ 【写真:アフロスポーツ】

 3日間に渡って行われた研修会について、選手たちからは多くの好意的な意見が聞かれた。

「こういう研修会は初めて参加するけど、前回(09年)参加できなくてもったいなかった。座学はすごく勉強になったし、チームジャパンとして一緒に戦えたらと思った。何事も無理だと思わず、前向きに進んでいって、目的を改めて考えてやっていきたいと思う」(上村)

「いろいろな人と話すことができて、自分も感じることが多くあった。いい3日間だったと思う。たくさんの仲間ができて、ソチに向けてより意欲が強くなった。最終的には自分の気持ちがすごく大事。いかにモチベーション高く練習できるかが重要になってくる」(高木美帆/スピードスケート)

 今回特に強調されたのが「チームで戦う姿勢」だ。グループワークはもちろん、ゲストによる講演もチームワークの重要性を説くものが多かった。橋本聖子ソチ対策プロジェクト委員長は研修の意図をこう語る。

「前回のバンクーバーでは、チームジャパンという形で臨めたことがいい結果につながった。冬も夏もオールジャパンであることは同じ。スポーツだけで考えるのではなく、異なる分野からも学ぶという大きな枠で捉えることがいかに大事かを学んでもらいたい」

 選手たちのコメントや、講義やグループワークに取り組む姿勢を見る限り、その意図は十分伝わったように思う。最後に橋本委員長は自身の経験を踏まえ、選手たちにハッパをかけた。

「私は強くなるためのわがままをコーチに向かってすごく言っていた。世界一になりたいと思った選手は、自分も含めて周りも世界一にならないといけない。だから、勝つためのわがままは受け入れたい。ソチに向けて事務局も含めて体制を作っていくので、勝つためのわがままを言ってほしい」

 チームで戦わない限り、ソチ五輪での成功はない。より多くのメダリストを輩出するために、関係者は日々努力を積み重ねている。選手たちにはぜひその期待に応える活躍を見せてもらいたいものだ。

<了>

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