ソチ五輪で問われるチームジャパンの結束=合同研修会に真央、沙羅ら代表候補が参加

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グループワークに取り組む浅田。多くの選手と交流したことでソチ五輪への思いが強くなったと話す 【写真:アフロスポーツ】

 日本オリンピック委員会(JOC)は4月20日から22日の3日間、味の素ナショナルトレーニングセンターで、2014年ソチ冬季五輪に向けた研修会「The Building up Team JAPAN 2013 for Sochi」を開催した。この会は競技間連携を促進し、チームジャパンの一員としての団結力を高めるために催されたもの。浅田真央(フィギュアスケート)、高梨沙羅(スキー/ジャンプ)、上村愛子(スキー/モーグル)ら各競技の日本代表候補選手が参加し、グループワークや卓球大会などで交流を図った。浅田は「普段は1人で競技を行っているので、チームワークで何かを作るというのは、新たな気持ちになった。このような行事でみんなと交流できて、ソチ五輪に行きたいという思いが強くなった」と語り、自身が得た収穫に満足感を表していた。

グループワークで交流を深める

卓球大会で高木(右)と同グループになった高梨(左から2人目)。その腕前は果たして!? 【スポーツナビ】

 初日の集合後はまず、選手たちがいくつかのグループに分けられ、大きな板を使った立体パズルや、竹筒やビールケースなどを使用してボールを飛ばす装置を作ることに挑戦した。ここで意外な能力を発揮したのがフィギュアスケートの全日本王者・羽生結弦。「工作や物づくりは得意」だという羽生は、PSPを分解したり、パソコンのHDDを自ら交換したこともあるようで、手先の器用さを披露した。その一方で、浅田はパズルでもたつき、「真央ちゃ〜ん」と突っ込まれる場面も。それでも「すごく楽しかった。みんなと交流できて、ソチ五輪に行きたいという思いが強くなった」と満面の笑みを見せた。

 2日目に行われた卓球大会は、どれだけラリーを続けられるかで勝敗が決まるというチーム対抗戦。賞品(漫画・宇宙兄弟の全巻セット)がかかっていたからか、あるいは生来の負けず嫌いによるものかは定かではないが、次第に真剣勝負の度合いを増していった。この卓球で悪戦苦闘していたのが、今季のスキージャンプワールドカップ(W杯)で、日本人として初めて個人総合優勝を果たした高梨だ。「ほぼ初めて」卓球をしたという彼女はぎこちない手つきでなんとかボールを打ち返していたが、最後は自らのミスでラリーを終わらせてしまい、チームメートに平謝りしていた。この卓球大会後、都合により研修会を後にした高梨は「いろいろな競技の人から刺激をもらった。一緒に五輪代表選手になりたいと思った。この2日間でいろいろな人と交流できて視野も広がったと思う」と有意義な時間を過ごせたことに感謝していた。

 こうしたグループワークはアイスブレークと呼ばれ、初対面の参加者同士の抵抗感をなくし、コミュニケーション促進のために行われるもの。競泳日本代表もロンドン五輪前の合宿でこの取り組みを実施し、本大会では戦後最多11個のメダルを獲得するなど一定の成果を収めた。個人競技といえども、五輪のような大きな大会を1人で乗り切るのは難しい。選手間の交流を深めることで、チームで戦う、仲間に支えられているという意識を持つことができるのは大きなメリットとなるはずだ。

なでしこに共感するスマイルジャパン

佐々木監督は、なでしこ躍進の理由として「選手間の強い信頼関係」を挙げた 【写真:アフロスポーツ】

 また、この研修会では「夏から学ぶ」と称してロンドン五輪で躍進した競泳、卓球、女子サッカーから選手と監督がゲストスピーカーとして登場。五輪に臨む心構えや強化方法を自身の体験談を交えながら語った。それぞれ調整方法は違えど、メダルを獲得した選手の大会までの過ごし方は参考になる。少しでも自らに生かそうと、選手たちは食い入るように聞いていた。

 講演した松田丈志(競泳)は北京、ロンドンと2大会連続、男子200メートルバタフライで銅メダルを獲得。男子400メートルメドレーリレーでも銀メダルを獲得するなど五輪での戦いを熟知する。しかし、その松田も初めて出場したアテネ五輪ではチームの良い流れに乗っていけず、経験不足を露呈してしまったという。「みんながいい雰囲気でやっている中、自分は少し意地を張って『俺は俺のペースで』という感じだった。チームに溶け込んでいるとは言えなかったと思う。五輪は1人で踏ん張って、頑張れるほど甘い舞台ではない。レースに向かっていくまではいろいろな人の力を借りるべきなんだと思った」。松田はアテネでの失敗を教訓とし、北京とロンドンではチームの一員として臨むことでメダルを手にすることができた。

 サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)の佐々木則夫監督も「自分を信じ、仲間を信じる。それがなでしこの最大の戦術」と、チームワークの重要さを説いた。女子W杯やロンドン五輪で見せた逆境に負けない姿勢は、選手たちの間に強い信頼関係があったからこそ生まれている。世界一になる前は、決して環境に恵まれていたわけではなく、W杯の出発前はほとんど注目されていなかった。しかし、東日本大震災で暗く沈んだ日本に少しでも勇気や希望を与えるべく奮起したというなでしこたちは、母国に特大の歓喜をもたらした。「なでしこはいつも第三者のために戦い、逆境に立ち向かうパワーがあったからこそ、女子W杯優勝、ロンドン五輪準優勝という結果を残すことができた。成功のプログラムはない。それに向けて最高の準備をすることが結果につながる」と、当時を振り返りながら佐々木監督は熱を込めた。

 こうした話に共感したのが、すでにソチ五輪出場を決めた大澤ちほらアイスホッケー日本女子代表(スマイルジャパン)のメンバー。「これからに向けて士気が上がった。女子サッカーは自分たちと境遇が同じで、学ぶことがいっぱいあった。なでしこも苦労を乗り越えた。自分たちもそうだし、スマイルジャパンもなでしこのようになりたい」(大澤)と話していた。

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