バスケ界に一石を投じる大分の挑戦=本当の地域密着を目指して再生なるか
地域密着こそがチーム再生の鍵
大分は老若男女問わず楽しめる会場を作り、本当の地域密着を目指す 【Photo:(C)AFLO SPORTS/bj-league】
また、車いすバスケットボールの交流戦を、ホームゲームに合わせて同時開催する方針も発表した。イギリスで発祥した車いすバスケが、日本で初めて導入されたのは大分県別府市。その縁もあり「決して車いすバスケが前座という位置づけではない。ヒートデビルズと共生する形で開催していきたい」と岡氏がいうように、車いすバスケットを導入するなど障害者スポーツで先進的な試みをしてきた大分中村病院や、九州車いすバスケットボール連盟とも協力して、ともに支え合いながら大分全体のバスケ熱を盛り上げようというのが狙い。プロバスケットボールという看板だけでは、観客動員が伸びない厳しい現状が大分にはあるからだ。
「大分県全体でもバスケットファンはそんなにいないんですよ。認知はされているだろうが、ブースター(ファン)として定着しているかというと、疑問符がつく。ましてや協会もいろいろと行事をやっているので、バスケット関係者はそうそう試合を見にいけない。だからこそバスケットを知らない人が見に来て、楽しかったと思えないとファンは増えていかないだろう。そういうものをどういった形で作っていくかだ」と岡氏も現状の厳しさを指摘する。
「バスケの話が全部できる風通しの良さが理想」
「おじいちゃん、おばあちゃんが見に来て、『今日も楽しかったね』というのが理想。もともとbjリーグには新潟アルビレックスBBのような地域密着のモデルケースが存在し、大分もそれを目指していた。しかし浸透していなかったと思う。原点に回帰してファン層を掘り起こしていかなければならない」(岡氏)。
変革に向けての一歩は、まず事務所を別府市から県協会のある大分市へと移転することから始まる。大分県全域にヒートデビルズの根を広げていくためにも、協会とチームの連携強化を図るためだ。「今後の構想の中で、協会の事務局もその中(運営会社が入るビル)に入れてしまおうという考えがある。協会がチーム運営をしていくわけではないが、そこに来たら協会の話、ヒートデビルズの話、車いすバスケの話が全部できる、そういった風通しの良い環境が理想的。会社名が「株式会社バスケで」なので、バスケで何ができるかを考えて進んでいければ、できないこともない」と岡氏は語る。
しがらみに囚われない革新的な挑戦
「どうせ起こすなら、新リーグで作って欲しいという話が日本バスケットボール協会側からあったのも事実。しかしわれわれとしては、ヒートデビルズの再生をしようという思いでやってきたので、新リーグに行くという気持ちは初めからなかった」と岡氏は答える。紆余曲折を経て誕生した新運営会社「バスケで」の存在は、プロスポーツチームが、本当の意味で地域密着を目指していく挑戦といえる。新生大分の発展が、今後の日本バスケットボール界に一石を投じることになるかもしれない。
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