バスケ界に一石を投じる大分の挑戦=本当の地域密着を目指して再生なるか

柴田愛子

大分ヒートデビルズを救った新会社設立

一度はチーム消滅の危機に見舞われた大分ヒートデビルズだが、大分県バスケット協会の有志たちの力もありで来季以降の存続が決まった 【Photo:(C)Oita Heatdevils/bj-league】

 プロバスケットボール「bjリーグ」に所属する大分ヒートデビルズ(以下大分)は、前運営会社「株式会社大分ヒート」のスポンサー交渉がうまくいかず、資金不足から経営が悪化。昨年12月3日にはシーズン途中でのリーグ退会を申請した。その後は緊急措置としてリーグが設けた「一般社団法人テンポラリーゲームオペレーション」が運営を引き継いでいたが、その期限は4月末までと決まっており、今季限りでチームが消滅するのは確定的となっていた。
 
 しかし、大分県バスケットボール協会の会長を務める安部省祐氏を中心とした有志が「県のプロバスケットボールの灯を消したくない」という思いから、チーム存続を目指す発起人会を立ち上げる。そして、新会社「バスケで」を設立し、来季のチーム運営を行う事を表明。リーグも新会社による大分の来季参戦を承認した。
 
 新運営会社の立ち上げにより、bjリーグ設立以来から参加してきた大分の灯は消えずに済んだ。しかし慢性的な財政難と経営不振により、この8年間で運営会社の入れ替わりも激しく、今回も看板の付け替えではないかと不安視する声も少なくない。果たして新生「大分ヒートデビルズ」は本当に生まれ変わることができるのだろうか。

県協会の支援が新たなモデルケースとして注目

 来季に向けた運営面で今までと大きく違うのは、チームを支えるバックアップ体制だ。注目すべきは、今回チーム存続のために立ち上がったのが、大分県バスケットボール協会の有志という点。会長の安倍氏をはじめ、県のバスケットボール協会関係者がチーム再生にむけて、積極的にサポートしていくという。
 
「県のバスケット協会が全面的にバックアップというわけではなくて、協会の有志で大分を再生していこうというのが大前提。今までも協力体制はあったが、なかなかうまくマッチングできていなかった。しかし今後は、協会も一緒にチームを支えていきましょうというのが、今までと違う点だと思う」と大分県バスケットボール協会の副会長である岡隆紀氏は話す。
 
 bjリーグでは、県のバスケットボール協会の理事がチームの運営にかかわる例は珍しくない。しかし、県のバスケットボール協会が積極的にチーム運営に関わっていくのは初の試み。2005年に日本バスケットボール協会から独立する形で誕生したbjリーグに対しては、県のバスケットボール協会の協力体制にも限りがあった。それだけに、今までにない県のバスケット協会とチームの連携が新たなモデルケースとして注目を集めている。
 
「これからは協会とチームが一緒にやっていきますということになるので、われわれ(協会)も地域の方に協力をお願いし、頭を下げにいくことになる。だから今までとは協力の度合い、中身の重みが違ってくるのではないか」と岡氏が言うように、すでに大分県の地方開催地では新たな動きが出てきているそうだ。
 
「おかげさまで、地方開催する先々で後援会が立ち上がって、すでに活動を始めている。今までも後援会組織というのはあったが、様々な事情で十分に活動できていなかった。しかし、われわれは門戸をひろげ、むしろ是非やって下さいという思い。つまりオール大分でやっていきたいと思っている」と岡氏の力強い言葉からも伺えるように、県のバスケット協会が明確に大分チームのサポートを打ち出したことによって、今まで二の足を踏んでいた団体が協力しやすい環境となったことが、チームにとってはなによりもうれしい変化だろう。

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