ペトロシアン完勝、まさに絶対王者!=「グローリー7 」リポート

遠藤文康

密かに期待されたブスタティだったが…

圧倒的な技量の差を見せつけ勝利したペトロシアン 【Ben Pontier/Glory】

 立ち技格闘技「グローリー」のイタリア大会「グローリー7」が現地時間20日、ミラノのメディオラヌム・フォルムで開催された。
 1万人の観衆で埋め尽くされた会場。主要試合全9試合。今回はイタリアのオクタゴンとグローリーの共同開催という形になっている。

 ペトロシアンはまさに貫禄の勝利。対戦相手に抜擢されたブスタティ。実は多くの関係者がブスタティには密かに期待していた。彼の持ち味は決して諦めないこと。例えリードを許しても最後まで反撃の手を休めず、ついには逆転してしまうというタフな底力が特徴。
 SBで活躍するオプスタルとの一戦では、初回にダウンを喫したものの徐々に反撃で追い込み、最後は逆転勝利をブスタティはものにしている。昨夏のロスマレン戦では下馬評をよそにドクターストップのTKOに追い込んでブスタティは勝利をもぎ取った。

技量の差を見せつけたペトロシアン

ノーモーションで繰り出されるペトロシアンの左ミドルは強烈 【Ben Pontier/Glory】

 予想外を起こすブスタティは多くの期待を受けてペトロシアンの前に立った。しかし、蓋を開けると技量差は歴然だった。ペトロシアンがノーモーションで繰り出す強烈な左ミドルはまさにダイナマイトムエタイそのもの。フォローで叩き込む左パンチはフックやストレートそれにアッパーへと自在に形を変える。優れた動体視力と反射神経はブスタティの攻撃を紙一重でかわす。持ち前の冷静さはリング上でも慌てることがない。そんなペトロシアンを相手に攻撃が空回りしながらも最後まで気持ちを前に押し出したブスタティは立派だった。

「勝ててうれしいです。調整がそれほどうまく行ってなかったので……。僕は誰の挑戦でも受けます。応援をよろしくお願いします」とリングスピーチをしたペトロシアン。まさに鉄壁の絶対王者。いずれこの牙城も崩れる日は来るだろう。しかし今そのイメージは全く湧かない。

<70kg>
○ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)
(判定3−0)
●ハフィド・エル・ブスタティ(モロッコ)

自ら墓穴を掘ったフルンハルト

一瞬のスキをついてダウンを奪ったロスマレン 【Ben Pontier/Glory】

 セミファイナルも良質のマッチメイクだった。昨年K−1グローバルMAX初代王者となったフルンハルト。一昨年イッツ・ショウタイム70kgトーナメント初代王者となったロスマレン。白人オランダ人と黒人オランダ人の対決はまさに90年代前後のオランダキックを彷彿とさせる分かり易い構図だ。両者の身長差20センチ。計量前に二人には軽い舌戦があった。
「タッパからリーチまで何もかも小せえ野郎だ。チビがどうやって俺に勝つんだ?」とフルンハルト。これを伝え聞いたロスマレンはいつものポーカーフェイスで、「高い木は風の全てを受ける。そんな諺をあいつは知らんだろうね?」と返した。

 リング上で対峙し上から見下ろすフルンハルトを下からにらみ返すロスマレン。
 はやる気持ちのフルンハルトに対しガードを固め圧力をかけるロスマレン。「ロビンはキック界のタイソンさ」とサワーが称したが、まさにタイソンばりに前に前に出てパンチをふるうロスマレン。トーナメントの世界頂点に立った者どうしの攻防レベルは高い。
 ヒザ蹴りを狙ったのだろう。フルンハルトが両手を広げてロスマレンの首を押さえに行った。その刹那。広げた両手でガードがら空きの顔面をロスマレンの左フックが貫いた。被弾したフルンハルトはダウン。舌戦で身長差やリーチ差のアドバンテージを語っていたにもかかわらず、自ら距離を潰してロスマレンの間合いに入り墓穴を掘ってしまった。
 一瞬のワンチャンスをものにしたロスマレン。その後は接近戦に慎重になり距離を取るフルンハルトはロスマレンにポイントリードを許してしまう。最終ラウンド開始早々に左ハイをロスマレンの首に叩き込んで場内をどよめかせたフルンハルトだが、全体を通して流れを作り主導権を握ったのはロスマレン。判定勝利をものにした。

<70kg>
●マーテル・フルンハルト(スリナム)
(判定3−0)
○ロビン・ファン・ロスマレン(オランダ)

ヴィールセンは2度のダウンを奪われ判定負け

元ショウタイム王者ヴィールセンは2度のダウンを奪われ完敗 【Ben Pontier/Glory】

 いよいよ次は「グローリー8」日本大会。各国での主要都市での転戦を続けながらグローリーは充実度を増していく。
 余談ながら、グローリーの名物レフェリーのヨープ・ウベダ氏が前回イスタンブール大会をもってグローリーのレフェリーを辞任した模様だ。かねてより問題レフェリングが指摘されていたこもあり、本人の希望という形でグローリーを辞したようだ。

<77kg>
○カラペト・カラパチアン(アルメニア)
(判定3−0)
●ロベルト・ココ(伊)

 カラパチアン31歳。ココ35歳。カラパチアンのワンツーは見た目以上にココに効いているがKOには至らない。うれしい判定はカラパチアン。

<95kg>
○マイケル・ドゥート(オランダ)
(判定2−1)
●スティーブ・マキノン(オーストラリア)

 たくさんスポンサーがほしかったドゥートは生活の安定に懸命。マキノンは4歳から空手を続けキックは16歳から。ドゥートが圧力をかけマキノン防御の形でともに一発狙い。パンチ頼りの大味な展開だった。

<65kg>
●セルジオ・ヴィールセン(スリナム)
(判定3−0)
○サク・カオポンレク(タイ)

 ヴィールセンに空振りさせるカオポンレクは余裕。カウンターの左フックとヒザで2度のダウンを奪ったカオポンレク。顔から覇気が消えたヴィールセンはスリップダウンを繰り返し客席からブーイングを浴びる。圧倒的ポイント差でカオポンレクの前に散った。

<70kg>

△チンギス・アラゾフ(ベラルース)
(ドロー)
△マラト・グリゴリアン(ベルギー)

 アラゾフ19歳とグレゴリアン21歳の新世代対決。19歳とは思えないアラゾフの自在な動きに将来とてつもない大物の予感。残念なことに攻めている最中にグレゴリアンの右ヒジに自分から額を当て出血するアクシデントでドクターストップ。1Rではルール上ノーコンテスト。ドローとなった。

<84kg> 
●サハク・パーパリアン(アルメニア)
(延長判定3−0)
○アルテム・レヴィン(ロシア)

 イッツ・ショウタイムの85kgと77kgのラストエンペラー対決。序盤はパーパリアンが取り中盤はレヴィン。終盤はドローで延長へ。最後はレヴィンのボクシングが際立った。サンドバック状態のパーパリアン。両手を後ろに回しノーガードで首を出し挑発するレヴィン。延長判定は全員がレヴィン。

<ヘビー級)
●ジョナタ・ディニズ(ブラジル)
(判定3−0)
○リコ・フェルフーフェン(オランダ)

 開始35秒に右フックでダウンしたディニズ。フェルフーフェンは左右のローで相手の左足インサイドとアウトサイドを交互に叩く。ディニズは嫌がっている。フェルフーフェンはこの1年で攻めの組み立てができておりかなり成長している。

<70kg>
●ユーリー・ベスメルトニ(ベラルーシ)
(判定3−0)
○デヴィット・キリア(グルジア)

 芦原空手出身で飛び道具のある曲者キリアのセコンドはセーム・シュルト。キリアが圧力をかけベスメルトニがリングを回る。イタリア的には今ひとつ感情移入しにくい両者の対決。ポイントを着実に奪っていくキリア。キリアの勝利。
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