ガンバ大阪に漂う爆発の気配=独走に必要な最後の鍵とは

高村美砂

予想以上だったJ2を戦う難しさ

開幕前は「圧倒的な独走」を予想されたG大阪だが、序盤から苦しみ、選手たちもその思いを口にしている 【写真は共同】

 今シーズン、クラブ史上初のJ2リーグ戦を戦っているガンバ大阪が、ここにきてようやく爆発の気配を漂わせている。そうは言いつつも、リーグ第8節を終えた時点での成績は3勝5分けの2位。この数字だけ見れば、頭にクエスチョンマークを浮かべる人も多いことだろう。実際、“圧倒的な独走”を予想していた周囲の期待に反して、勝ちあぐねる序盤戦になったのは事実だ。それはピッチで戦う選手たちも自覚するところ。第5節のジェフユナイテッド千葉戦を終えた段階では、口々にJ2で戦う難しさを吐露していた。

「個々のレベルでみればJ1よりもやや劣るかなとも感じる。実際にゴール前での精度やプレーの怖さという点ではさほど圧力を感じない。ただ、思っていた以上に組織としてまとまっているチームが多いというか、チームとして『対G大阪』という狙いもはっきりしている分、それを崩す難しさもある」(阿部浩之)

「ゴール前でのフィニッシュの精度は明らかにJ2の方が低いと感じる。その分、試合の中で相手の攻撃に怖さを感じる回数は少ないと思う。ただ想像していたよりは相手の出方が速かった。また、テクニック勝負というより、とにかくガムシャラに人にガツガツくる選手が多くて最初はその圧力に多少押されてしまったところもあった。それもある程度予想していたら、うまくいなせたと思う。けれど、序盤戦ならではのバタバタ感というか……。そういった相手に慣れずに、自分たちからミスを犯して点を取られて、自分たちで首を絞めたという試合もあった」(加地亮)

連動性が機能し始めた札幌戦

 そうした状況に変化が感じられるようになったのは、第6節のコンサドーレ札幌戦あたりだろうか。アウエーの地に乗り込んだG大阪は、序盤からポゼッションを高めつつ攻撃陣が躍動。前半終了間際のFWレアンドロのゴールを皮切りに、後半に入ってからもMF家長昭博、DF岩下敬輔が得点を重ね、今季3度目となる1試合3ゴールを実現する。結果的に後半のアディショナルタイムに失点を喫し完封勝利こそ逃したが、この試合で見せた連動はG大阪の覚醒を予感させるものだった。
 その要因として挙げられるのが、攻撃の“連動性”が出始めたことだろう。この試合後に長谷川健太監督が語った言葉がそれを物語る。

「僕が指揮を執るようになり、これまでG大阪が作り上げてきた攻撃サッカーと大きくやり方を変えたわけではないです。しかし、いろんな約束事を設けて新たな戦術に取り組んできました。そうした中で、うちの選手は理解力も高いし、実際に頭の中ではそれを描けていたと思うのですが、いざそれをピッチで表現するとなるとズレがあったと思います。それぞれが疑心暗鬼でプレーしていたところもあり、なかなか頭と体がリンクせず、チームとしても連動することができていなかった。札幌戦ではその部分で個々の頭と体がようやく一致してきたのかな、というふうには思います」

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著者プロフィール

関西一円の『サッカー』を応援しようとJリーグ発足にあわせて発刊された、関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、同雑誌の休刊に伴い、1998年からフリーライターに。現在はガンバ大阪、ヴィッセル神戸を中心に取材を展開。イヤーブックやマッチデーブログラムなどクラブのオフィシャル媒体を中心に執筆活動を行なう。選手やスタッフなど『人』にスポットをあてた記事がほとんど。『サッカーダイジェスト』での宇佐美貴史のコラム連載は10年に及び、150回を超えた。兵庫県西宮市生まれ、大阪育ち。現在は神戸在住。

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