“和製イブラ”平山にかかる復活への期待=ブランク乗り越え、けがをする前より強く

後藤勝

2年ぶりに先発を飾ったナビスコ杯

2年ぶりに先発した試合では無得点に終わったが、監督が寄せる期待は変わらない 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 明けて13年シーズン、平山のFW陣における序列は3番目だった。ルーカスは中盤に回ったが、プレミアリーグ帰りの李忠成が加入。1トップには渡邉千真が君臨し、ベンチスタートが続く。それでも練習試合でゴールを積み重ね、じっと先発の機会をうかがってきた。

 そして4月3日、ナビスコカップ予選リーグ第3節、味の素スタジアムでの名古屋グランパス戦で、とうとうスターティングイレブンに名を連ねた。11年のJ2開幕戦、決勝点に絡む活躍を見せたサガン鳥栖との1戦から、2年と1カ月が経っていた。ポポヴィッチ監督は平山をおもんぱかり、過大な期待はせずに、しかし活躍を望んでいた。

「仕上がってきていると思います。けがによる長期離脱で、なかなか彼本来のプレーをすることができませんでしたが、(不調の部分があるとすれば)ブランクによるものだと思います。彼自身がけがをする前のように強くなれると信じてほしい。彼自身があきらめてしまったら、前の状態に戻る、あるいは以前よりも良い状態になることはありませんから。自分の力を疑ってほしくないと思います。

 イブラ(平山)にはサッカーを楽しんでほしいと思っています。ここですべてを見せられるに越したことはないですが、見せられないまでも彼本来の力の一部分でいいからしっかりと見せてくれれば良いと思います。彼のひたむきな姿勢と日頃のトレーニング、トレーニングマッチでの成果がチャンスを与えるにはふさわしいと判断して起用することにしました」

潜在能力に大きな期待を寄せる指揮官

 当日のメンバーはディフェンスラインとドイスボランチの守備ユニットを先発常連組が固め、ゴールキーパーに塩田仁史が入り、前線の4人にフレッシュな選手を配するメンバーとなった。

 2列目は右から河野広貴、田邉草民、ネマニャ・ヴチチェヴィッチ。1トップに平山を置いた布陣である。試合はこの4人が流れるように連動し、鮮やかな攻撃を見せた。

 平山のプレーはとても柔らかく、スピードがあり、相手守備陣のあいだを縫うように飛びだしてはシュートを狙った。得点こそなかったものの、チームの持ち味である組織的な攻撃を阻害せず、連動するチームの一部として機能しながら、4本のシュートを打った。
「連携し、ボールも人も動くプレーができた」と、平山本人にも手応えがあった。

 もっとも、平山は「最後の部分が課題」と反省を口にしてもいた。ただ、得点していたら、むしろできすぎではないか。ポポヴィッチ監督が試合前に「ここですべてを見せられるに越したことはないですが」と言っていたのは、得点できれば最高だが、いまの段階ではたとえ得点できなくとも普段取り組んでいるサッカーを表現してくれればいい、という意味だろう。それほど平山のけがは困難なものだった。東京の特徴である全員サッカーを表現しきってピッチに復帰しただけでも、驚異的な回復と言うべきなのだ。

 ポポヴィッチ監督は平山を「イブラ」と呼んでいる。もちろん、ズラタン・イブラヒモビッチから頂戴したあだ名だ。

 単に大きさが似ているだけではないと信じたい。05年、ヘラクレス・アルメロ(オランダ1部)でプレーした平山は、05−06シーズンのエールディビジ第12節、対RBCローゼンダール戦に途中出場し、左斜め後方から上がった浮き球にジャンプ――普通の選手なら頭がある高さで胸トラップ。相手の選手2人に背後から迫られると右足で後方へ浮かせてそのアプローチをかわし、彼らの背後に抜け出て、自ら浮かせたボールの落ち際を左足でたたくダイレクトボレーで、リーグ3点目を決めた。あのスーパーゴールを憶えているなら、平山の潜在能力が、イブラの名に恥じないものだと確信できるはずである。

 おりしも海の向こうでは、イブラヒモビッチを擁するパリ・サンジェルマンがFCバルセロナと火花を散らし、チャンピオンズリーグ準決勝進出まであと一歩と迫っている。その勢いに乗るように“和製イブラ”平山相太は、再び頂天を目指し、今まさに登り始めたところなのだ。

<了>

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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