工藤公康氏が語る、大谷・藤浪の可能性=224勝左腕ズバリ解説、怪物ルーキーたちの開幕戦

大利実

藤浪の最大の特徴、それは“動く”ボール

自身のボールの特徴をもっとつかめば、藤浪は2ケタを勝てる! 【写真は共同】

――続いてはセ・リーグをお願いします。

 今年も巨人が強いですね。戦力がそろっているのは誰が見ても明らか。ぼくが注目しているのは巨人の独走をどのチームが止めるかという点ですね。

――期待している球団はありますか。

 広島と阪神です。広島は前田健太、野村祐輔らを中心に、先発陣が安定してきています。巨人との3連戦を見ても、先発はしっかりと試合をつくりました。こうやって先発が安定感ある投球をしてくれると、チームとして、大きく崩れることはないように思います。統一球導入以降、それ以前と比べて、3割バッターやホームラン数が減ったように、やはり投手陣がきちんと整備されているチームこそ、上位進出のカギを握ると思います。

――阪神ではドラフト1位の藤浪晋太郎投手が開幕3戦目に先発しました。今後もローテーションでの活躍が期待されています。

 藤浪くんの特徴は、ボールが動くことです。本人は意識していないと思いますが、ストレートが微妙に動く。テレビ中継ではスローモーションでボールの軌道を確認できるシーンがありますから、そのときに注目してみてください。キャッチャーが構えている位置と、ボールがどれくらい移動しているか見てみると、その辺りがファンの皆さんにもおわかりいただけると思います。
 あれだけの身長があって、さらにボールが動くとなると、バッターはなかなか打ちづらいはずです。

――バックスピンのきれいな回転のストレートではないんですね。

 ありません。藤浪くんがプロで生きていくことを考えたら、ボールをもっと動かすことに意識を置いたほうがいいかもしれませんね。そういうタイプのピッチャーであることを自覚する。
 試合中にゴロアウトとフライアウトの数を数えてみると面白いのではないでしょうか。動くボールを得意にするピッチャーは、ゴロアウトが多い。ゴロアウトが増えていくと、藤浪くんは二けた勝てる可能性が出てくるでしょう。

――ルーキーでは巨人の菅野智之投手も先発で7回1失点と結果を残しました。

 彼も良いピッチャーですね。一番の特徴はコントロールが良いこと。巨人の打線もありますし、間違いなく二けたは勝つでしょう。タイプは藤浪くんとは違い、正統派の右投手です。ストレートはきれいなフォーシーム。藤浪くんとの違いを見つけてみるのも、野球観戦時に面白いと思います。

<了>

工藤 公康(くどう・きみやす)

【スポーツナビ】

【プロフィール】

名古屋電気高校(現愛知工業大学名電高校)を経て、82年に西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)へ入団。在籍13年間で8度の日本一に輝き、西武ライオンズのエースとして黄金時代を支えた。その後も福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)、読売ジャイアンツの日本一に貢献。2004年8月17日、対ヤクルト戦で通算200勝を達成した。
2011年に現役引退。2012年より日刊スポーツ評論家、テレビ朝日系列『報道ステーション』の野球キャスターをはじめ、野球評論家、野球解説者として活躍。子どもたちの野球教室も定期的に開催しており、野球の発展と普及活動に力を注いでいる。通算成績224勝142敗3S

【書籍紹介】

『野球のプレーに、「偶然」はない−テレビ中継・球場で観戦を楽しむ29の視点−』(工藤公康著・カンゼン刊)が4月3日に発売。
グラウンドで起こりうるプレーにはすべて理由があり、根拠があります。
長いシーズンを戦うプロ野球において、「偶然」が入る要素は非常に少ないのです。
本書では、工藤式の野球の観戦術・見方を29の視点から徹底指南。これらの視点に野球の奥深さが凝縮されています。
親子で、野球ファン同士で野球観戦時のお供に、最良の1冊です!

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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