工藤公康氏が語る、大谷・藤浪の可能性=224勝左腕ズバリ解説、怪物ルーキーたちの開幕戦

大利実

学習能力の高さを見せた大谷、しかし工藤氏が見たいのは“投手”として、だ 【写真は共同】

 WBCが終わり、いよいよ2013年ペナントレースが開幕。今年は春季キャンプ時から大谷翔平(北海道日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)といった大型の高卒ルーキーが注目を浴び、すでにスタメン出場・先発として登板するなど、期待通りのスタートを切った。

 現役時代通算224勝をあげ、現在はプロ野球解説者として活躍する工藤公康氏に、開幕1カードを終えて、高卒ルーキーを中心に今季の展望を聞いた。(インタビュー日 4月1日)

開幕3連戦で勢いをつけたのは千葉ロッテ

224勝左腕・工藤氏が見た開幕シリーズ、注目点をズバリ解説する 【スポーツナビ】

――セ・パともに開幕カードの3連戦が終わりました。チームにとって、この3連戦はどういう意味を持つのでしょうか。

 まず考えるのは、『勝って勢いをつけたい』『開幕ダッシュを決めたい』ということです。余裕があれば、新外国人や若手が使えるかどうかも試してみたい。首脳陣にしてもまだ手探りの段階です。

――3連戦で負け越したり、3連敗を喫すると暗いムードになるのでしょうか。

 大事なのは、ネガティブに考えすぎないことです。負けたときこそ、『144分の1』と考える。まだ、シーズンは始まったばかりですから。

――それでは、まずパ・リーグのほうからお話を伺います。3連戦を終えてみて、良い流れに乗っていきそうなチームはありますか。

 2試合連続で延長サヨナラ勝ちをした千葉ロッテでしょうね。ああいう勝ち方は勢いがつきます。伊東勤新監督を迎えての戦いですから、ファンの気持ちをつかむうえでも大きな2勝だったのではないでしょうか。

学習能力の高さを見せた大谷、しかしあくまでも投手として見たい

――選手としては、日本ハムのドラフト1位・大谷翔平選手に注目が集まりました。開幕戦でいきなりの2安打1打点。工藤さんの目にはどう映りましたか?

 学習能力の高い選手という印象を受けました。1打席目は岸孝之投手のインコースまっすぐに対して見逃し三振を喫しましたが、2打席目に同じインコースまっすぐのボールを引っ張ってライト線への長打。3打席目には高めに浮いたチェンジアップを長い腕でひろってライト前。高卒1年目の新人とは思えぬ、内容のあるバッティングだったと思います。普通は緊張して、バットが振れなかったりするものですけどね。
 今は相手バッテリーも、大谷選手の得意なコース、苦手なコースを探っている面もあるでしょう。
 私の経験上、バッターボックスの立ち位置で、ある程度インコースが得意か苦手かわかります。
 まだはっきりとはいえませんが、大谷選手はどちらかというと、ホームベース寄りでバッターボックスに立っているので、比較的インコースは得意なのかなとも思います。

――今後はピッチャー大谷のデビュー戦にも注目が集まります。

 いまバッティングを褒めましたが、ぼくの中では大谷くんはピッチャーです。

――それはどうしてですか?

 高卒1年目で156キロや157キロが投げられるピッチャーは、そうはいませんよ。それに大谷くんにしかない角度がある。そして、ピッチャーのほうが長く野球をできます。

――「二刀流」はどう見ていますか。

 本人も希望していますし、球団も大谷くんの可能性を引き出すためにさまざまなことを考えている。これまで本格的に二刀流に挑戦した選手はいませんからね。楽しみであることは確かです。

――日本ハムに2勝1敗と勝ち越したのが埼玉西武でした。大谷の先輩・菊池雄星投手が開幕2戦目でまずは1勝を上げました。

 雄星は何より落ち着いて投げていたのが一番良かったですね。今年はローテーション投手としてやってくれるでしょう。ただ、西武の場合は毎年、不安視されているのが抑えです。今年も開幕2戦目に投げた新ストッパーの大石が2点を失いました。144試合を考えると不安は残りますが、これからどうなっていくか見ていく必要があるでしょう。リリーフが安定すれば、優勝争いにからんでくるはずです。分業制となった今のプロ野球において、勝利の方程式を確立させることが優勝への必須条件ともいえます。早い時期に確立できれば、ベンチも継投への迷いがなくなりますし、仮に打たれたとしても、方程式で敗れたのだから仕方がないと、納得もいくものです。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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