安樂を支えた捕手・金子ら、輝き見せた選手たち=センバツ
繋ぎの意識が徹底された浦和学院
話題の中心となった済美の安樂(右)。捕手・金子の支えも、2年生エースの活躍を後押しした 【写真は共同】
初戦は土佐(高知、21世紀枠)にやや苦しんだものの、3回戦以降の4試合は全て二桁安打と打線が好調だった浦和学院。大会史上2人目の3試合連続本塁打を放った4番・高田涼太(3年)のように目立つ選手もいたが、全員が繋ぎの意識を徹底できていたからこそ、高田の長打が生きた形だ。その象徴は2番の贄隼斗(3年)。1番の竹村春樹(3年)が対戦相手から警戒される中で、「相手にとって嫌らしい形での出塁を心掛けている」という贄が四死球などの出塁からチャンスを作る場面が多かった。
2年生エースの小島和哉は全5試合で先発。42イニングで失点がわずかに3、複数の失点をしたイニングは一度もなかった。球速はない小島の一番の武器が球の出所の見えにくさ。
対戦した打者は、「肘のしなりがよい」と話し、捕手の西川元気(3年)も、「小島の球は球速以上のキレがある。自分が対戦したとしても、打ち難いと思います」とエースを分析したコメントを発した。本人にとっては、昨夏の甲子園3回戦(天理戦)でリリーフした際に相手の流れを止めきれなかった悔しさが糧となっており、選手の成長をという意味で結果的にあの天理戦の継投策が間違いだったとは言い切れない。2年春という早い時期に優勝投手となった小島は、「もっと走り込んで球速を上げたい」と更なる技術の向上を誓っていた。
済美の捕手・金子「安樂が気持ち良く投げられるように」
この安樂を支えたのが野手陣。特に捕手の金子昂平(3年)は、166センチ60キロの小さな体ながらエースの球を受け続けた。金子の特徴を表すシーンが準決勝の高知戦。1点リードの9回に先頭打者に三塁打を浴びて、4番の和田恋(3年)を迎えた。マウンドに駆け寄る金子に対し安樂は、「敬遠しましょうか」と提案。だが金子は、「何を言ってるんや。お前の持ち味でインコースをドンドン攻めようや」と一喝。胸をポンと叩き、少し弱気だった安樂の気持ちを奮い立たせた。時に笑顔で、時に厳しくエースを叱咤(しった)する姿が、安樂が安心して投げられる要因でもある。敗れはしたが決勝の前に金子はこう話している。
「勝ち負けにこだわる気持ちはもちろんあるのですが、自分からすれば安樂が気持ち良く思い切り投げられるように配球して、楽しく最後までやりたい」
肩の強さや打撃などが捕手の能力を示す指標とも言われるが、投手に気持ち良く投げてもらう雰囲気作りも捕手にとって重要視すべき要素と言えよう。そんな意味では、敦賀気比(福井)の喜多亮太(3年)、県岐阜商・神山琢郎(3年)、済々黌・安藤太一(3年)、大阪桐蔭・久米健夫(3年)など、今大会は献身的な支え型の捕手が多かった印象だ。