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王者スペインが直面する深刻な問題
地に落ちたアルゼンチンが見せる復調

スペインが置かれた危機的状況

W杯欧州予選でフィンランドに引き分け肩を落とすスペイン代表。ボール保持率に似合わない決定力不足が浮き彫りに
W杯欧州予選でフィンランドに引き分け肩を落とすスペイン代表。ボール保持率に似合わない決定力不足が浮き彫りに【写真:AP/アフロ】

 フットボールの世界は刻一刻と変化し続けるものだ。わずか9カ月前に史上初のユーロ(欧州選手権)2連覇を成し遂げたスペイン代表と、その1年前に自国開催のコパ・アメリカ(南米選手権)でベスト8敗退の憂き目にあったアルゼンチン代表。その2チームが今、当時とは180度異なる状況に置かれているのはその一例である。


 聡明(そうめい)で常に冷静、スターぞろいのロッカールームの扱いも巧みなビセンテ・デルボスケ監督に率いられたスペインは現在、毎試合ライバルとの間に圧倒的な差をつけているボールポゼッションの高さを、ゴールに結び付けられないという問題に直面している。


 昨年スタートしたワールドカップ(W杯)予選では2連勝と好スタートを切ったものの、その後は2試合連続、しかもホームで勝利を逃している。後半を通して圧倒的にゲームを支配しながら終了間際に同点ゴールを許した10月のフランス戦に続き、22日のフィンランド戦でもフットボール文化を持たぬ弱小国を相手に勝つことができず。結果として首位の座を失った彼らは、26日に控えるフランス戦で勝てなければ自力でのグループ首位通過の可能性を失うことになってしまった。

決定力不足以上に深刻な問題

 4−0と大勝したイタリアとの決勝にかき消されてしまった感があるが、“ラ・ロハ”(スペイン代表の愛称)が抱えるゴール不足という問題はすでに昨年のユーロ2012から存在していた。しかもその問題はチャンスを決められない決定力不足ではなく、チャンス自体を作ることができないという、より深刻なレベルに至っている。その問題は先週のフィンランド戦のように、相手にゴール前の守備を固められた際にはっきりと現れる傾向がある。


 昨年のユーロを通し、スペインメディアでは“ファルソ・ヌエベ(偽9番)”を置くゼロトップシステムの是非が議論されてきた。バルセロナで生まれたこのシステムはどのチームでもどんな状況でも有効なものではなく、いくつかの条件がそろった上で初めて生きる戦術である。しかし、その条件の1つであるリオネル・メッシのような選手がデルボスケ率いるスペインにはいない。


 ペナルティーエリア内を持ち場とするセンターFWを置かず、流動的に2列目の選手がゴール前に抜け出すゼロトップシステムに相手守備陣を惑わせる効果があるのは確かだ。だがダビド・ビジャのようなストライカーが前線に構えれば、相手のセンターバックは彼へのマークに労力を割かざるを得なくなる。そしてビジャがマーカーを引きつれて他の選手のためのスペースを作り出すことで、より多くの選手がゴール前に侵入することも可能なはずである。


 フィンランド戦の前半、デルボスケはセスク・ファブレガスをファルソ・ヌエベで起用したものの、ゴール前を固める相手の守備を崩す有効な手段とはならなかった。それはこのシステムが常に有効なわけではないこと、そしてメッシなしでバルセロナと同様に機能させるのは難しいことをあらためて証明する結果となった。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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