レミー・ボンヤスキー、世代交代マッチで失神KO負け=3.23グローリー

遠藤文康

世代交代マッチを呈したレミーvs.タイロン

若手の成長株タイロンがK−1で3度優勝経験のあるレミーをKOで下した 【Ben Pontier/Glory】

 グローリーシリーズ第5弾がロンドンのエクセルアリーナで開催された。ピエール・アンドランド会長のお膝元での大会。場内はフルハウスとなった。オープニング4試合後のメインプログラム全11試合。締めはレミー・ボンヤスキーとタイロン・スポーンの一戦。ともにスリナム出身でオランダ在住。年齢的に見ればちょうど世代交代マッチとなる。

 もともと体格に恵まれ、ライトヘビーからスタートしてヘビー級ファイターとして経験を重ねたレミーは周知の如くK−1で3度のトーナメント覇者。一方のタイロン・スポーンはウェルター級から一段ずつ階級を上げ続け10年経った28歳の今、100キロ越えのヘビー級戦士となった。その肉体に無駄なものは何一つない筋肉の鎧である。K−1参戦を夢見たタイロンだったが、そのK−1が破綻したことで目標を見失った。昨年からはMMA転向を射程に入れアメリカで練習を重ねる両刀使いだが、今回再びキック路線重視に方針を変えたようだ。

カウントを必要としなかった右ストレート

グローリー世界ヘビー級王座セーム・シュルトへのタイトル挑戦を口にしたタイロン 【Ben Pontier/Glory】

 オランダでのキック選手を見ていて思うことは、日本人とは違って全盛期のピークが30歳〜35歳の間にあるということだ。日々の節制や調整さえきちんとしているならばその時期に経験・技量ともに最充実期を迎えている選手が多い。28歳のタイロンはまさにこれからそのピーク時を迎える大成長期にいる。しかしながらキャリア豊富のレミーは大切なそのピーク時の期間にセミリタイア状態で3年を過ごした不安材料がある。37歳での復帰だが、このブランクがどう影響しているか。年齢相応の経験値により普通の選手相手なら不覚をとることはないだろうが、上り調子のタイロン相手となると小手先のごまかしは効かない。

 そして結果はタイロンが2Rに右フックによるKOでレミーを完璧に葬り世代交代を印象付けた。タイロンの右ストレートフックがレミーのアゴ先を貫いたと同時に、レミーは気を失った状態で下段ロープから半身を乗り出し昏倒した。その姿はレフェリーのカウントを必要としなかった。

「レミーは伝説の一人です。ハードな戦いでした。なぜ彼が優秀な王者であったのかも戦ったことで分かりました。僕は次へ向けて挑戦したいし、この競技で自分の遺産を築きたい。ヘビー級で誰とでも戦う用意があります」と試合後の控え室でスポーンは語った。「2週間後にはグーカン・サキとダニエル・ギダの試合がイスタンブールで行われます。僕は両者と戦いたい。そしてセーム・シュルトのタイトルに挑戦したい。グローリーがどうあれ、僕は準備OKです」

 立ち上がったレミーは観客の温かい拍手に包まれ「全て出しきりました」と挨拶をした。「37歳での復帰は厳しかった。全てはタイロンのためだった。次のことは分からない。いい状態でのカムバックというのは難しいものだ。最善を尽くして全てをやった。でも僕の体が、もう厳しいと言っている」
 レミーの今後はどうなるだろう?

黒い喪章をつけたクラウスは判定勝利

左手にラモン・デッカーへの尊敬と追悼の意を込めて、黒い喪章をつけて戦ったクラウス(写真左) 【Ben Pontier/Glory】

 そのボンヤスキージムで試合前に集中特訓をするダニオ・イルンガは1Rジャンピングニーで相手の鼻をへし折ってのKOで場内を盛り上げた。モッサブ・アムラニと地元選手リアム・ハリソンのスピーディな試合は互いの攻撃が激しく交錯するわずかな隙にアムラニがレバーフックを瞬時に決め、ハリソンを悶絶に葬った。
 2月に急逝したラモン・デッカーへの尊敬と追悼の意を込めて左腕にダイヤモンドの図柄の黒い喪章をつけたアルバート・クラウスは判定勝ちを収めた。
 ロード・トゥ・グローリー・アメリカ大会で今大会参戦チケットを手に入れたエディ・ウォーカーとダスティン・ジャコビー。残念ながらウォーカーはローに倒され、ジャコビーは3ダウンTKOに散った。アメリカのキックはまだまだ低レベルから脱し切れていない。日本で活躍するシングもインド代表として参戦したが惜しくも判定負けだった。

 次は2週間後にトルコ・イスタンブールにおいてグローリー6が、トルコの2週間後にはイタリア・ミラノにおいてグローリー7が開催される。グローリーの今後の世界展開に期待したい。

レミーのジムで特訓したというダニオはひざ蹴りでKO勝ちを挙げた 【Ben Pontier/Glory】

■グローリー5結果
3月23日・英国ロンドン

<ヘビー級>
○タイロン・スポーン(2R 右フック→KO)●レミー・ボンヤスキー

<70kg>
○ジョーダン・ワトソン(判定)●スティーブ・モクソン

<70kg>
○アルバート・クラウス(判定)●ワレン・ステフェルマンス

<85kg>
○ステファン・ウェイクリング(2R ロー→KO)●エディ・ウォーカー

<95kg>
○ダニオ・イルンガ(2R ヒザ→KO)●ステファン・サスペレギ

<95kg>
○ミハエル・ドゥート(1R 3D→TKO)●ダスティン・ジャコビー

<64kg>
○モサブ・アムラニ(1R レバーフック→KO)●リアム・ハリソン

<ヘビー級>
○ダニエル・サム(判定)●ジェイディープ・シング

<70kg>
○ジョアン・ファヴィオ(判定)●コンスタンティン・パスニチウク

<67kg>
○リース・マカリスター(判定)●ティム・トーマス

<77kg>
○ジョナタ・オリヴェイラ(判定)●ニコラ・ガロ
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