2017年WBCでV奪還へ、若手選手に求められるもの

中島大輔

変わった炭谷のタイミングの取り方

日本代表の立浪コーチと井端に教わり、足の使い方を変えた西武・炭谷。若手選手にとってWBCは学びの貴重な機会となった 【写真は共同】

 3月22日に横浜スタジアムで行われたオープン戦の横浜DeNA対埼玉西武を見て、驚いたことがある。第3回WBCから帰ってきた炭谷銀仁朗(西武)の打撃フォームが変わっているのだ。WBC以前と、左足のタイミングの取り方が違う。どこか侍ジャパンの4番を務めた阿部慎之助(巨人)のようだ。
「立浪(和義、打撃コーチ)さんと井端(弘和、中日)さんに教えてもらって、今のフォームになっています。足の使い方を立浪さんに教えてもらいました。阿部さんを意識しているわけではありませんよ」

 選手たちにとって、WBCは貴重な経験を積める舞台だ。日本と野球スタイルの違う外国勢と対戦できることはもちろん、超一流のチームメートから技術、練習態度、メンタルの持ち方まで学ぶことができる。炭谷や中田翔(北海道日本ハム)ら中堅、若手選手は多くの収穫があったはずだ。

自分の姿を重ねた西武・秋山

 侍ジャパンの面々はいずれも日本球界で実績を誇るが、28人のうち19人がWBCに初出場だった。優秀選手に選ばれた前田健太(広島)と井端も、クローザーを務めた牧田和久も、坂本勇人も中田も鳥谷敬も……。メジャーリーガー不在の中、初めて日の丸を背負った選手たちがベスト4進出に大いに貢献した。
 そうやって日本の野球力がアップしていくことが、侍ジャパンというチームを持つ意義でもある。代表の恩恵を得られるのは何も出場した選手ばかりでない。12年11月に強化試合として行われたキューバ戦に出場した秋山翔吾(西武)は、今回のWBCを“現実的”に見ていた。

「良いピッチャーを崩すには、良くも悪くも流れを変えるバッターがいないと難しいと思いましたね。王建民(台湾)にしろ、プエルトリコの先発(マリオ・サンティアゴ)にしろ、同じ様なアウトの取り方でした。王建民が投げる球の90パーセントくらいはシンカー。自分ならどうするかと見ていましたね。チームバッティングが念頭にあっても、『自分のヒットがほしい』と思うのはプロとして当たり前。でも、良いピッチャーには小技で崩していく姿勢、球数を放らせるのも大事だな、と」

 秋山は12年11月のキューバ戦で日本代表に選ばれ、チームメートたちを見て「バッティングやスピード、緊張感の中で普通にプレーするのはさすがだな」と感じた。日本のトップ選手たちと一緒に日の丸を背負って戦ったからこそ、自分の姿を重ねながら今回のWBCを見ていたのだろう。

西武・永江はWBCを“生きる教本”に

 一方、埼玉西武の高卒2年目の19歳は違う見方をしていた。オークランド・アスレチックスに移籍した中島裕之の穴を埋めるショートとして期待される永江恭平は、WBCの試合を録画し、生きる教本とした。侍ジャパンも世界の代表も、それぞれに学ぶところが多かったという。
「井端さんは右打ちのポイント、チームバッティングのときの体の使い方、どういう球を待っているのか。フィジカルに優れた外国人たちはすごい打ち方をしていても、軸がしっかりしているな、と。下(半身)の力を上(半身)に伝えていましたね。そういうのを見習っていきたい」

 高卒1年目からショートとして堅守を見せている永江にとって、特に刺激的だったのがドミニカのホセ・レイエス(トロント・ブルージェイズ)、アメリカのジミー・ロリンズ(フィラデルフィア・フィリーズ)らメジャーリーグでもトップレベルの遊撃手たちだ。

「ショートはセンターラインで、守備の要です。肩が強いし、フィールディングも良い。それでいてバッティングもすごい。すべてにおいてレベルの高い選手が守った方がチームにはいい。僕もそういう選手にならないと。日本代表は一番上のレベルだから、目指しているところです。ライオンズでレギュラーを取って、4年後に入りたい」

 秋山や永江のような若手がWBCから刺激を受け、4年後に日の丸を背負うまでに成長すれば、侍ジャパンは好循環でレベルアップしていく。2017年に行われる予定の次回大会には、今回以上に初出場選手が名を連ねてほしい。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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