WBCよりもMLB優先、不振米国が直面するジレンマ

杉浦大介

WBC決勝ラウンドを7月開催にしてはどうだろう?

決勝ラウンドを7月開催にすれば全米のスポーツファンを釘付けにするはず 【Getty Images】

 個人的な意見を言えば、WBCに対してアメリカが抱える“問題”のうちの大半は開催時期を変えれば解決できると考えている。
 端的に言って、アメリカに新たなスポーツイベントを根付かせる月として3月は最悪に近い。NBA、NHLのシーズン中の上、日本の甲子園大会に良く似た注目を集める大学バスケもたけなわ。観る側にとってもベースボールへの準備は整っておらず、さらに“身内”であるMLBの春季キャンプとすらも競合せねばならないのはほとんど致命的である。
 しかし……多くの米メディアが指摘している通り、WBCをMLBシーズンのど真ん中に持ってこれたらどうだろう?

「春の間に予選ラウンドだけ行い、選手たちの体調が整っている7月のオールスターブレイクに決勝ラウンドを行なうべきだ」
 ESPN.comのジム・ケイプル記者が記している通りに変更すれば、選手の準備不足は解消され、出場を決断するスター選手も確実に増える。決勝ラウンドだけなら時間もかからず、米メディアが嘲笑する珍妙な制度(球数制限、延長戦の特別ルールなど)も必要なくなる。何より、7月は大学バスケ、NBA、NFLもお休みだけに、MLBオールスターゲーム、WBCと続く真夏の1週間は全米のスポーツファンを釘付けにするに違いあるまい。

国際大会として活況だっただけに際立つ米国の不振

 もっとも、これらはすべてアメリカの都合を最優先した考えであるのも確かである。7月開催にすれば、他国リーグとの日程調整、練習時間確保の難しさなどまた新たな問題も生まれて来るはず。それを理解してか、セリグ・コミッショナーは3月の開催時期に拘っているとも伝えられる。
 だとすれば……これまで通り、アメリカのスターがこぞって参加する“ドリームチーム”の誕生など今後も望み薄だろう。
 第4回以降に誰が監督を務めることになろうと、各所属チームのGM、首脳陣に気を遣ったような選手起用法は変わらないのではないか。そして、そのようなぬるい態度で臨んでは、もともと世界大会への興味が薄いアメリカのファンを惹き付けることも難しいに違いない。

 前述通り、熱狂的なラテン、献身的なアジアの国々の活躍のおかげで、WBCは一定以上の成功を収めている。今大会ではイタリア、オランダ、スペインらの健闘も目立ち、おかげで立派な国際大会の様相を呈しても来た。
 ただ、そんな活況の中であるがゆえに、ベースボール発祥の地であるアメリカの不振はより際立ってしまう。すでに第3回を数え、大会のポテンシャルも誰もが認めているだけに、アメリカが直面する“主催国なのに自国のリーグ戦優先”のジレンマは余計にもどかしく映るのである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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