木村沙織、物足りないバレー欧州制覇=海外プレー経験が物語った佐野との差

田中夕子

日本人所属チーム同士が欧州王者をかけ激突

女子バレーの欧州王者に輝いたワクフバンク。チーム内での木村(上段左から2人目)の存在感は全日本のそれとは大きく異なる 【写真:アフロ】

 バレーボール女子の欧州最強クラブを決めるヨーロッパチャンピオンズリーグのファイナル4が現地時間の9、10日にトルコ・イスタンブールで行われた。リーグラウンド、プレーオフを勝ち上がったチームによって行われるファイナル4は、まさにヨーロッパのバレーシーンの最高峰の舞台となる。10日の決勝戦ではトルコのワクフバンク・テュルクテレコムが3−0でアゼルバイジャンのラビタ・バクーを破り、2季ぶり2度目の優勝を飾り、2012−13シーズンのヨーロッパチャンピオンに輝いた。

 例えばこれがサッカーならば、ヨーロッパを舞台にして行われるチャンピオンズリーグに高い関心が寄せられたとしても、珍しいことではない。だが、それがバレーボールになると、決して同様ではない。熱心なファンであればもちろん周知のことではあるだろうが、今年はこれまでとやや様相が異なる。日本から多くのファンがトルコへと足を運び、地上波放送ではないものの、日本のテレビ局が史上初めて生中継を敢行するなど、これまでよりも大きな注目を集めた。

 その理由は明確である。優勝したワクフバンクには、ロンドン五輪後に東レアローズから移籍した木村沙織がいるからだ。なおかつ、そのワクフバンクが準決勝で対戦したガラタサライ・ダイキン(トルコ)には、全日本女子でもリベロのレギュラーとして活躍する佐野優子が所属している。ヨーロッパの頂点を決めるチャンピオンズリーグのトップ4で、日本人選手が所属するチーム同士が対戦したのは史上初のことだった。

木村「トップレベルにはまだまだ足りない」

ピンチサーバーやレシーバーでの起用が多い木村。全日本での活躍と比較すると物足りなさは否めない 【写真:アフロ】

 日本人所属チーム同士による注目の準決勝で、両者の起用法に関して明暗が分かれる。ファーストリベロとして試合に出場し続けた佐野に対し、木村はリザーブでのスタートとなった。木村の出番が訪れたのは、第1セットの終盤、先行したガラタサライをワクフバンクが追い上げ、22−22と同点とした場面だった。

 ピンチサーバーとして投入された木村は、ガラタサライのサポーターからの大ブーイングを受けながら、サーブを放った。

「日本だったら、ああいう状況はないですよね。でも全然気にならない。とにかくサーブで崩すことだけを考えて打ちました」

 ストレートに放ったサーブは相手のレシーブを崩したが、得点にはつながらず。その後も後衛の3ローテでサーブレシーブを受けた木村は、前衛に回ったところでレギュラーとして君臨するポーランドのエース、マウゴジャータ・グリンカと交代した。

 日本での活躍を知る者からすれば、いささか物足りなく感じる起用のされ方だが、これはグリンカだけでなく、セルビアのエース、ヨバナ・ブラコチェビッチら攻撃力の高いメンバーをスタメンとして起用する策を重視した結果であり、木村もこれを受け入れている。

「日本で見ている方が期待する形とは違うかもしれないけれど、自分のチームも相手もトップレベルの選手が全世界から集まっている環境なので。自分もトップレベルの一員として、まだまだ足りないけど、今はいろんなことを吸収したいです」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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