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進化示した木崎、次世代エースへ名乗り
名古屋に見た日本女子マラソンの光明
笑顔でゴールする木崎。日本女子マラソンの次世代エースとして期待がかかる
笑顔でゴールする木崎。日本女子マラソンの次世代エースとして期待がかかる【写真は共同】

 世界選手権(8月、モスクワ)の国内最終選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソン2013は、木崎良子(ダイハツ)が2時間23分34秒で優勝。派遣設定記録2時間23分59秒以内をクリアして世界選手権代表に内定した。野口みずき(シスメックス)も2時間24分05秒で3位に入り、復活を印象づけた。

木崎が優勝 世界陸上代表に内定

 注目の野口が積極的にペースペーカーの横を走ってレースを支配した、この大会。終盤になって主役に躍り出たのは、序盤からずっと野口をマークして走っていたロンドン五輪代表の木崎だった。


「野口さんが2004年のアテネ五輪で優勝した姿を見て、『いつかどこかのレースで一緒に走れれば、自分にとって良い経験になるな』と思っていた選手。今回も前半から前の選手に付かずに自分のリズムで走っていたので、『こういう選手がいたから日本は強くなったんだろうな』と思っていました。自分はまだ後に付くしかできなかったので、今日は良い刺激をもらいました」


 こう話す木崎だが、レースの中では一度、野口を逃がしかけた。29キロ過ぎからスーッと前にでた19歳のベルハネ・ディババ(エチオピア)がふたりを離し始めたのだ。30キロでは3秒差。それを野口はジワジワと追い、31キロ過ぎには追い付いて、前へ出る積極的な走りを見せた。一方木崎は30.7キロの給水で野口に置いていかれた。だがそこで我慢した木崎はジワジワと迫り、32.7キロでふたりに追い付いた。


「自分の中では30キロまでは余裕を持って走ることを考えていて、20キロ過ぎまでは5キロ17分のペースも楽に感じて気持ち良くいけました。27キロを過ぎてからの名古屋城の脇の下りを走ってから徐々に脚にきて体も重くなったけど、『35キロまで』『40キロまで』と思う気持ち、また『モスクワの世界選手権に行きたい』という気持ちを忘れずに最後まで走りました」

 中盤までの集団でいる時は「日本人トップになりたい」という気持もあったが、30キロ付近でトップ集団が3人に絞られてからは「優勝できるかもしれない」と思うようになった。そしてゴールが近くなると「優勝したい!」という強い気持になったという。


 そんな木崎は35.6キロ過ぎのディババのペースアップに付いていって、野口を引き離し始めた。その後40キロまではふたりで並走したが、40キロ過ぎの給水で相手がまだ給水ボトルを手にしているうちに仕掛けた。

「本当はラスト1キロまで付いていって、そこからスパートするつもりだったんです。でも外国人選手たちは給水を取るのが苦手そうで、立ち止まって取っているのも見ていたから。40キロの給水で、父が大会前に『チャレンジしろ』と言ってくれたのが頭に浮んで、いつもと違うスパートをしてみようかなと思いました」


 こういう理由で仕掛けた木崎のスパートは見事に決まった。残り1キロ地点で待っていた林清司監督が掛けてくれた「残り1キロを3分40秒でいけば2時間23分台だ」という声も冷静に聞き、2時間23分34秒でゴールして日本陸連代表決定条件を突破。男女マラソンを通じて初の世界選手権代表一発決定を果たしたのだ。

ロンドン五輪惨敗が木崎を強くした

 この結果は偶然では無い。木崎にはレース中も明らかに余裕が見えたし、走りにも成長の跡が見られた。フォームは以前のように足が流れることなくコンパクトなものになっていた。


「以前は地面を蹴って走っていたために後半走れなくなったりしていました。そこで蹴るのではなく、足を重心の真下に置くようにして走ることを、練習中から監督に指摘してもらって意識しました。さらに肩甲骨の動きを良くして肩に力が入らないスムーズな走りができるように意識したり、疲れてくると右の腕振りが強くなって左右のバランスが悪くなっていると分かったので、1カ月だけだったけど、食事の時に左手で箸を使ってバランスを整えるようにしました」など、日常生活の中でもさまざまな取り組みをしたという。


 それもすべて、ロンドン五輪16位で世界との差を見せつけられ、「自分はまだまだ甘い」と実感し、世界と戦いたいという気持を強くしたからだ。

 そんな努力が彼女自身の心の中に自信を芽生えさせ、5キロ17分前後のペースにも余裕を持って付いていける攻めの姿勢を生み出したのだろう。

折山淑美

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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