内川聖一が大舞台で力を発揮する2つのポイント=現役最強ヒットマンが挑む世界舞台

田尻耕太郎

3番昇格でサムライ打線に流れ

打撃とムードメーカー、両面で侍ジャパンの軸として期待される内川 【写真は共同】

 24日、京セラドームで行われたオーストラリア戦は10対3の大勝。侍ジャパンが過去2戦の貧打からようやく抜け出した。山本浩二監督は宮崎合宿中に「打線は厳しい展開になる。大量点は望めない気がします」と話していたが、点の入らない接戦ばかりでは勢いがつかないし、精神的消耗度も激しくなる。野球は投手力と言われるが、やはり打線の爆発力なしに勝ち続けるのは困難である。

 サムライ打線の流れを変えたキーマンは、内川聖一(福岡ソフトバンク)だ。前の2試合は5番打者だったが、この日は3番に昇格。すると、先制点は内川のバットから生まれた。初回1死二塁でセンターへタイムリー。さらに8回にもダメ押しの2点タイムリーを放ち3安打3打点の活躍を見せたのだ。

 内川は現役最強のヒットマンだ。昨季はシーズン157安打で最多安打タイトルを獲得。11年は首位打者(打率3割3分8厘)。いずれも横浜在籍時に続く2度目。両リーグでのタイトルホルダーとなった。また、昨季で5年連続打率3割を達成した。これは日本人右打者として史上3人目(落合博満81年〜87年、中島裕之06年〜10年)である。

内川独特のWBC対策も万全

現役最強の右打者・内川がWBC3連覇に導く 【Getty Images】

 WBCは09年大会に続き2度目の出場だ。「前回は先輩たちに付いていくのでいっぱいいっぱいでした」と振り返るが、6試合出場で打率3割3分3厘をマーク。1次ラウンドの韓国戦では初回に2点二塁打を放ち14対2の7回コールド勝ちに貢献。2次ラウンドでも対戦した韓国戦ではペトコパークの左翼席に本塁打を突き刺した。また、決勝戦の延長戦。イチローが勝ち越し打を放ったあの場面は球界に語り継がれる名シーンだが、そのホームを踏んだのが内川だった。
 そんな男が、この大舞台に無策で臨むはずがない。投手でクローズアップされるWBC使用球にも内川はきっちりアジャストしようとしていた。

「打ちにいく前にしっかりトップをつくって、センターへ弾き返すイメージですね。WBC球は投手の指にかからなかった球がすごく動くんです。それに対応しないといけない」
 トップをつくる動きは、早く、大きく。さらにストライクゾーンの違いも課題に挙げられるが、「僕は周りがボールに見える球でも、ストライクと思ったら打っちゃうタイプだから(笑)」と気にする素振りはない。この敏感力と鈍感力の絶妙なバランスもまた、この大舞台で力を発揮するポイントになりそうだ。

「ポスト川崎」としての役割

 また、内川には打撃以外の部分でも大きな期待がかかっている。ムードメーカーとしての役割だ。ソフトバンクでは、同じくWBC代表組の松田宣浩と本多雄一を従えて、ベンチでは3人で大はしゃぎ。移籍1年目の頃から「僕、生え抜きの選手みたいでしょ」と笑っていた。オーストラリア戦のベンチを見ると、内川は前列のど真ん中に陣取っていた。23日の試合では相川亮二(ヤクルト)の逆転3ランの際に、真っ先にベンチを飛び出してガッツポーズ。24日の2本目のタイムリーでは松井稼頭央(東北楽天)をまねて「BURN!」を披露してみせた。

「ソフトバンクに移籍してきた時もそうでしたが、まずは内川聖一とはこんな人間ですよと周りに知ってもらいたい。そのためにはバカもやりたい。みんなが僕を面白がってくれればいいと思うんです」

 過去2回のWBCでは川崎宗則(現マリナーズからFA)がその役割を担い、その貢献度の大きさがいまだに語り草となっている。その良き伝統は、同じソフトバンクから代表入りしている内川をはじめ松田、本多の3人でぜひ受け継いでもらいたいところだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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