今季のJリーグを彩るブレイク必至の若手=世界レベルの潜在能力を発揮できるか

安藤隆人

鹿島の将来を担う次期DFリーダー候補

CBとして決して大柄ではない昌子(白)だが、空中戦の強さやキック力には大きな魅力がある 【Getty Images】

 鹿島には植田と同じCBに、これも個人的に期待をするDF昌子源がいる。鹿島と言えば、昨年の新人王に輝いたMF柴崎岳ばかりに目が行くが、同期の昌子も大きなポテンシャルを持っている。182センチとCBとしては大柄ではないが、屈強なフィジカルとバネを生かし、空中戦で強さを発揮する。さらにキック力も魅力で、最後尾からのロングフィードはチャンスを生み出す。

 今でもはっきりと印象に残っているのが、彼が高校3年生の時の沖縄インターハイの米子北対流通経済大柏の一戦で見せた、弾丸FKだ。中央やや左寄りの約30メートルの距離から右足インステップで強打したボールは、ゴールに一直線。ピッチサイドのテントにいた筆者の目の前を超高速で駆け抜けていくと、ゴール手前で急激にホップして、ゴール左上隅に突き刺さった。彼のパワーとキックの質が凝縮されたシュートだった。今季はこのシュートをJの舞台でも見てみたい。鹿島の次期DFリーダーとしてのきっかけをつかむ1年としてほしい。

 実は昌子も植田同様に、米子北高入学後にFWからCBにコンバートされた経緯を持つ。近い将来、昌子と植田のCBコンビが鹿島の不動の砦となり、そのまま日本代表の砦となる。そんな将来を思い描きながら、2人の1年目、3年目のシーズンを見ていきたい。

C大阪のクラブの“顔”の系譜候補

南野(白)は将来、C大阪の8番を背負う最有力候補。トータルバランスが非常に高いアタッカーだ 【Getty Images】

 最後に南野は、将来のC大阪のエースナンバー8番を背負う最有力候補だ。これまで森島寛晃、香川真司、清武弘嗣、そして今季から柿谷曜一朗というクラブの“顔”が付けている8番。その系譜を引き継ごうと、今季C大阪U−18から昇格した彼は、昨年11月に早くもJリーグデビューを果たすと、3試合に出場。天皇杯では4回戦の清水戦で初ゴールを決めるなど、早くも頭角を現した。

 高いキープ力とパスセンスを併せ持つが、南野の持ち味は何と言ってもポジショニングの良さと、ボールを受ける前の動きの質の高さだ。常に味方の状況、相手の状況を見極め、スペースを巧みに作り出して、裏に行くのか、スペースに入るのか、けん制して入るのか、絶妙なタイミングで出し入れすることで、バイタルエリアで決定的なチャンスを作り出す。このスペースの有効活用できる駆け引き、戦術眼、そしてそれを実現できるスピードとボールコントロール。トータルバランスが非常に優れたアタッカーだ。

「遠慮しないでどんどん仕掛けて行きたいし、将来は世界で戦いたい」と高みを目指すハイセンスアタッカーは、1年目からエンジンフル回転で、自身の夢を一気に手繰り寄せて行くだろう。

王者広島が誇る期待の若手3人衆

 サンフレッチェ広島の若手にも期待をしたい。個人的にはMF鮫島晃太、野津田岳人、FW浅野拓磨の3人に注目をしている。鮫島は鹿児島城西高時代から、広い視野と正確なミドル、ロングキックを駆使し、攻撃の起点となるボランチだった。しかし、高校時代の負傷の影響もあり、プロ入り後は若干出遅れた感があった。だが、ポテンシャルは非常に高く、3年目の今年は飛躍の1年にしたいところだ。

 今季ユースから昇格した野津田は、昨年すでにデビューを飾り、リーグ5試合に出場。1.5列目で力強いドリブルと、シュートセンスで今季はレギュラーポジション確保を目論(もくろ)む。

 四日市中央工高から入団した浅野は、ボールを引き出す動き、裏への抜け出しのタイミングとスピード、シュートセンスのどれもがハイレベル。ポテンシャルは非常に高く、早いうちにプロのスピードに慣れることができれば、1年目からの出場も十分にありうる。

 ここでは7選手しか挙げてはいないが、ほかにも飛躍が期待される若手はたくさんいる。もしかすると伏兵と目された選手が、一気に主役になるかもしれない。楽しみが尽きないJリーグ。それぞれのお気に入りの若手、期待の若手の存在に目を向けて見てみると、また違った楽しみが生まれるかもしれない。ぜひ、スタジアムに足を運んで将来の希望が詰まった若手の躍動を見てほしい。Jから世界へ。その息吹は確実にそこにある。

<了>

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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