今季のJリーグを彩るブレイク必至の若手=世界レベルの潜在能力を発揮できるか
着実に成長を遂げている“小さな重戦車”
昨年ブレイクした石毛は今季、主軸の1人として新シーズンを迎える 【Getty Images】
高卒ルーキーでは清水エスパルスのMF石毛秀樹、鹿島アントラーズのDF植田直通、セレッソ大阪のFW南野拓実に注目だ。3人とも2011年のメキシコU−17ワールドカップ(W杯)ベスト8メンバーで、世界が注目を集める若手でもある。
石毛は168センチと小柄ながら、体幹がしっかりしており、ドリブルの切れ味も鋭い。強烈なミドルシュートを放てるパワーアタッカーでもあり、筆者はかつて“小さな重戦車”と呼んでいた。
U−17W杯では質の高いポゼッションに加わりながらも、機を見て前線に飛び出してはチャンスに絡んだ。すばしっこく、かつ強靭(きょうじん)なボディーバランスは、並み居る強豪国のDFを苦しませ、4試合出場で3ゴールを挙げ、ベスト8進出に大きく貢献した。この活躍が認められ、2011年のアジア年間最優秀ユース選手賞を受賞し、大きな話題となった。
さらに昨年も勢いは止まらず、2012年3月30日には早くもプロ契約。4月のヤマザキナビスコカップ第2節の新潟戦でクラブ史上最年少出場記録を塗り替えると、6月のコンサドーレ札幌戦では初ゴールを記録した。さらにリーグ戦にも12試合に出場し、ナビスコカップニューヒーロー賞を史上最年少の18歳1カ月で受賞。大ブレイクの昨季を終え、今季から背番号8を背負うなど、決してニューカマーではない、主軸の1人としての新シーズンを迎える。
石毛のプレーで忘れられないシーンがある。それは11年5月22日の高円宮杯プレミアリーグ第2節の尚志高戦。1−0のリードで迎えた39分に、そのシーンが訪れた。右サイドタッチラインギリギリの位置でDFと激しい球際の攻防を展開すると、強い下半身と、ブレない体幹をフルに生かして、DFを背負った状態でボールをキープ。次の瞬間、体をねじ込むように強引に反転させ、前を向いてワンステップから豪快に右足を振り抜いた。ちょうどこの時、筆者はピッチサイドにいて、石毛のすぐ斜め後ろの位置にいた。彼の右足から放たれた強烈なシュートは、唸(うな)りを上げてゴール左上隅に一直線に突き刺さった。あまりにもきれいな弾道だったため、その光景は今でもはっきりと目に焼き付いている。
Jの舞台でも再び目の前で度肝を抜いたプレーを見せてほしい。着実に成長を遂げている“小さな重戦車”。これから先、より馬力と性能は増し、破壊力が磨かれていくことを期待している。
まだ粗削りも身体能力と闘争心あふれるCB
圧倒的なフィジカルと空中戦の強さが魅力の植田(左)。若手育成に定評がある鹿島でどれだけ成長できるか 【写真は共同】
どちらかというと、スマートな選手が増えてきた中で、植田の存在は異色中の異色。屈強なフィジカルから醸し出される「相手をつぶす」という本能。かつてテコンドーで世界大会にも出場した彼は、「僕はそんなにうまくはないけど、誰にも負けたくない。とにかく負けるのが嫌なんです。CBの魅力は相手をつぶせること。攻撃してくる選手を止めたり、空中戦で競り勝った時の快感がやめられません」と、体にみなぎる闘争本能を包み隠さずに表現する。
CBとしてはまだまだ粗削りだ。それもそのはずで、植田が本格的にサッカーを始めたのは中学で、CBは大津高に入ってから。これから学ぶべきものがたくさんあるが、彼には誰にも負けない身体能力と闘争心がある。それに荒削りと言うことは、逆に言えば伸びシロがたくさんあるということ。若手育成に定評のある鹿島において、植田がどこまで磨かれるか。岩政大樹というお手本がいる中で、着実な成長を遂げてほしい。当然、1年目から出場し、経験を積ませるということも育成手段としては十分にありだ。