松田、マエケン――3連覇へ光明を見た侍ジャパン合宿最終日

田尻耕太郎

ソフトバンク・松田に本来の姿

WBC宮崎合宿を打ち上げ、一本締めをする主将の阿部(中央)。右上は日本代表の山本監督=宮崎 【写真は共同】

 予言など大それたことをしたつもりはない。だが、侍ジャパンの宮崎合宿は「雨のち晴れ」で、2月21日に7日間(休日1日含む)の合宿を打ち上げた。「選手たちの目の色が違っていたね」と山本浩二監督。代表メンバーから漏れた5名は朝早くにチームを離れた。厳しい現実だが、それもまた本大会が迫っている証でもある。

「福岡での開幕へ向けて、次は大阪。5人のことは絶対に忘れずに、全員で戦って、(壮行試合、強化試合が行われる)大阪では結果にこだわっていきましょう」

 主将の阿部慎之助(巨人)がチーム全員で作った輪の中心で語りかけ、手締めの音頭を取った。その後の居残り練習。特守では三塁に松田宣浩(福岡ソフトバンク)、遊撃では松井稼頭央(東北楽天)と鳥谷敬(阪神)がノックを受けていた。先日のコラムでは松田の元気がやや物足りないと嘆いたが、この日は違った。声のハリ、大きさ、相手へのげき。どれも素晴らしかった。松井も鳥谷も年上だが、遠慮しない姿勢が何より頼もしく映った。

マエケンに「自信」と「笑顔」

ブルペンで投げ込む前田健と笑顔のWBC日本代表の山本監督 【写真は共同】

 そして、代表選考で最も関心を呼んだのが前田健太(広島)だった。代表入りという結果に、もう後戻りはできないし、今後言い訳もできない。それは前田本人が一番よく分かっている。この日は今合宿で初めてブルペン入りし41球を投げ込んだ。

「10割の力で投げました」精一杯のメッセージだった。

 だが、決して無理をしたわけではなかった。投球後の自信に溢れた表情と時折見せるおどけた笑顔は、この1週間で初めて見た。
「今日は良かったです。合宿に入って一番良かったです! いろいろな方に心配をかけましたが、今日はそういう意味でも安心してもらえるピッチングができたと思います。僕自身も『いけるぞ!』と思えるピッチングでした」

 テレビ局のインタビュアーから「ファンの皆さんにも『大丈夫です』というメッセージをください」と向けられると、「じゃあ、今日の良いピッチングの映像をしっかり流してください(笑)」と返して周囲の笑いを誘った。山本監督も与田剛投手コーチも「力のあるボールを投げていた」と声をそろえた。今後は京セラドームで行われるオーストラリアとの壮行試合に登板することも内定した。

「本戦まではあと1試合に投げるだけ」(前田)

 登板間隔を考えれば、新聞などの報道どおり3月3日の中国戦(ヤフオクドーム)に先発できる構えだ。投手陣最大の不安要素にもようやく光が射したのだ。

「希望」の光を、もっと大きく

 今後の侍ジャパンは、山本監督の言葉を借りれば「実戦を通して、チームをつくり上げていく」ことになる。23日と24日はオーストラリアと壮行試合(京セラドーム)。その後、阪神(26日、京セラドーム)と巨人(28日、ヤフオクドーム)との強化試合を経て、3月2日の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)本大会の第1ラウンド初戦(ブラジル戦、ヤフオクドーム)に臨む。

 この1週間の合宿では広島戦の惨敗をはじめ不安材料もあり、厳しいことも書いた。だが、一方で中田翔(日本ハム)のパワーに魅せられたり、一時は当落線上と思われた澤村拓一(巨人)や能見篤史(阪神)が主戦級へ期待値を上げたりするポジティブな話題も見つかった。そして、合宿最終日にも光明はあった。

 世界一3連覇へ――光をもっと大きく、そして決して絶やしてはいけない。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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