大敗から一夜…侍ジャパンに感じる物足りなさ=日本代表合宿リポート

田尻耕太郎

野手陣は4時間練習後に1時間半の特打

観客が一番沸いたのが、笑いを誘っただけの村田(左)と長野の挟殺プレーの練習ということに物足りなさが残った 【写真は共同】

 前日の17日、広島との強化試合で0対7という屈辱的大敗を喫した侍ジャパン。一夜明けた18日は埼玉西武と強化試合第2戦をサンマリンスタジアム宮崎で行う予定だったが、前夜から降りしきる雨のため中止となり、室内施設「木の花ドーム」で練習を行った。

 9時40分の練習開始から、全体練習は約4時間。その後の自主練習では野手陣のほとんどが約1時間半の居残り特打を行った。「バットを振り込める時期は今しかない」と語ったのは内川聖一(福岡ソフトバンク)。前日の零封負けが関係しているわけではないとのことだったが、サムライたちの眼は真剣そのものだった。

一流だからこそ求めたい「質」

 この日着目したのが、午前中の守備練習である。報道陣用に配られたメニューには「バントシフト(サインの徹底)」「けん制」「重盗防止、ランダンプレー」と細かく分けられていた。
「打線の方は厳しい展開になるという気がします。大量点は望めないような気がします」とは、前日の試合の山本浩二監督のコメントだ。山本ジャパンが目指すのは1点をやらない野球――その意図を明確にしたのがこのメニューである。

 だが、その内容は、率直に言うと物足りなさ過ぎた。技術面ではない。声、いわゆる覇気がないのだ。ランダンプレー(走者の挟殺プレー)などは野手の連係プレーである。しかし、静かな空間をボールが行き来するだけ。山本監督が「ハッスルボーイ」と期待する三塁手の松田宣浩(ソフトバンク)は確かに威勢よく声を張り上げていたが、ホークスでの姿と比べればまだ物足りない。この日、観客席が一番沸いたのは、三塁手の村田修一(巨人)が走者の長野久義(巨人)をセンターまで追いかけてアウトにするという、ただ笑いを誘っただけのシーンだった。

 明るい雰囲気づくりは確かに必要である。だが、その方法は違うと思う。お互いが声を出し合いながら、同じ目標に突き進む者同士が高め合う姿。日本プロ野球の最高峰が集う場所だからこそ、そのような姿に期待したいと思うのだ。

20日は代表生き残りを懸けた「紅白戦」

 この日、西武戦が行われれば28名のWBC日本代表を発表することになっていたが、「ゲームが中止になったから今日というわけにはいかないでしょう」と山本監督。19日は練習が休みとなり、20日に紅白戦を行うことが決まった。両軍の登板予定投手も発表された。

【紅組】澤村拓一(巨人、2回)→大隣憲司(ソフトバンク、2回)→浅尾拓也(中日、1回)→山口鉄也(巨人、1回)

【白組】攝津正(ソフトバンク、2回)→牧田和久(西武、2回)→森福允彦(ソフトバンク、1回)→涌井秀章(西武、1回)

 試合後には代表選手28名が決まる予定だ。「それ(サバイバルマッチ)は選手たちが一番よく分かっているでしょう。こっちは悩むだけ」(山本監督)。内川は「昨日がああいう試合だったので、投手も野手もお互いに良い結果を残しながら、(壮行試合の行われる)大阪に向かいたい」とナイン全員の思いを代弁した。
 代表合宿は残りわずか。無駄にできない大切な一瞬を積み重ね、世界一3連覇へ今一度気を引き締めたいところだ。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

【速報】サッカーU-23日本代表、U-2…

フットボールチャンネル

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント