WBC3連覇へ雨のち晴れ=日本代表合宿 初日リポート

田尻耕太郎

ランニングを先頭で引っ張った巨人トリオ

侍ジャパンが始動、阿部、坂本、内海(前列左から)の巨人トリオがランニングで先頭を引っ張った 【写真は共同】

 雨のち晴れ――WBC3連覇に挑む山本浩二監督率いる33名の侍たちが、2月15日に宮崎市でついに始動した。
「ジャージとユニフォームでは全然違う。気持ちが高ぶっています」と山本監督。エースナンバー「18」を背負う杉内俊哉(巨人)も「朝5時半に目が覚めた。ほどよい緊張感とウキウキした気持ち、ですね」と笑顔で語った。

 だが、合宿初日は前夜から降り始めた雨が止まず、室内練習場「木の花ドーム」からのスタート。9時半の練習開始、ウォーミングアップのランニングでまず先頭に立ったのは主将を務める阿部慎之助だ。それが次第に3列となり、阿部、坂本勇人、内海哲也の巨人勢が隊列を引っ張った。坂本は24歳で内野陣では最年少だが、内野の要であるショートのレギュラーが期待されるだけに、早くも自覚を行動で示した格好だ。

沢村賞右腕さえ魅了する豪華投手陣

 アップ後は投手と野手が分かれて練習。投手は7名がブルペン入りしたが、それを最高な場所から取材することができた。捕手の真後ろ。しかも約2メートルしか離れていない。気分は主審だ。そこから見た杉内のスライダーは文字どおり横滑りする物凄いキレ味。内海のストレートは我々のところまで突き刺さるような威力だ。思わず惚れ惚れする。

 その頃、ブルペンの横では投球練習をしない投手陣がノックを受けていた。普段、チームで練習する時、彼らは自分のことを最優先に考えて動くため他人のピッチングに興味を示すことはあまりない。ここに集まっているのは各球団のエース級やセットアッパー、守護神。だから当然かもしれない。だが、この日は違った。ノックの順番を待つ間、ずっと杉内や内海らのピッチングを食い入るように見つめているのである。昨季、沢村賞に輝いた攝津正(ソフトバンク)でさえも、まるで見とれているかのように視線を送るのだ。

「だってすごい顔ぶれじゃないですか!」(攝津)

 さらに田中将大(楽天)と前田健太(広島)は、涌井秀章(西武)や沢村拓一(巨人)のピッチングを見ながら、自らも振りかぶるしぐさをするなどして野球談議。日本最高レベルが集まるこの場所で、それぞれが何かを吸収しようとしていた。

「二塁手」鳥谷が一つの課題

 一方の野手陣は室内で打撃練習を行った後に、午後を前にして天候が急激に回復したためサンマリンスタジアムに移動してシートノックなどの守備練習を行った。代表では普段とは違うポジションを任される選手もいる。この日のシートノックでは大島洋平(中日)がレフト、長野久義(巨人)がセンター、鳥谷敬(阪神)がセカンド、中田翔(日本ハム)が本職のレフトのほかにファーストも守った。
「さすがですよ。チームの主力選手たちが来ているわけですから。気持ちよく見させてもらいました。ミスも少ないし、それぞれの特徴が出ていました。さすがです」(山本監督)

 唯一課題を挙げるとするならば、セカンドの鳥谷か。普段はショート。気になるのは併殺で二塁に入る時だ。ショートは一塁走者が正面から来るが、セカンドだと視界には入らない。国際大会ではハードなスライディングが予想される。その点については山本監督も「想定したプレーをするように話しています」と頷いた。


 今大会の侍ジャパン。大きな一つの特徴が、全員が国内組であるということだ。メジャーリーガー不在のため3連覇を不安視する声も少なからず聞こえてくる。だが、33名中19名が20代という若きサムライたちは、経験を糧に日々成長していくだろう。WBC本大会の開幕は3月2日(ブラジル戦、ヤフオクドーム)。世界3連覇という偉業への視界はどんどん晴れていくはずなのだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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