メッシがもたらすアルゼンチン代表の平静=再び口にした母国リーグ挑戦の可能性

悪しき伝統に異を唱える新旧キャプテン

2018年までバルセロナと契約延長したメッシ。将来的に母国でプレーする可能性も口にした 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 2−3というスコアはピッチ上で生じた出来事を正確に表した数字ではない。スウェーデンは終了間際の直接フリーキックによるゴールで1点差に詰め寄ることができたものの、アルゼンチンはもっと多くのゴールを奪えるだけのチャンスを作っていた。

 ただし、チームとしての完成度にはそこまでの差がなかったのも事実だ。バルセロナへ戻る前、メッシは「今は偉大なグループを作り上げている途中なので、今後も同じメンバーでプレーしていきたい」と発言。さらに「同じ失敗を繰り返してはならない。過去の過ちから何かを学ぶべきだ」と、元キャプテンのマスチェラーノが繰り返し主張してきた意見を代弁していた。

 新旧のキャプテン2人が発したこれらの言葉が意味するもの。それがサベーラとアルゼンチンサッカー協会(AFA)に向けられた、過去の実績を重視して有名選手ばかりを集めるという、近年続いてきたアルゼンチンの悪しき伝統への警笛であることは明らかだ

 サベーラは記者に対し、何らかのアクシデントがない限りはすでにワールドカップへ向けた招集メンバーのうち13、14人は固まっていると明かしている。またサベーラはケガで昨季の大半を棒に振ったニコラス・ブルディッソの回復具合、1月にアトレティコ・マドリーへ加入したエミリアーノ・インスーア、サンプドリアでセンセーショナルな活躍を見せ、イタリア代表のチェーザレ・プランデッリ監督も招集を検討しているマウロ・イカルディらのプレーを継続的にチェックしている。

引退前は母国でのプレーを希望

 メッシのストックホルムでの滞在時間は非常に短かった。試合翌日の朝にはマスチェラーノ、そしてアルゼンチン代表での活動時には世界中どこへでもメッシに同行するバルセロナのトレーナー、フアンホ・ブラウとともにバルセロナの空港に到着し、午後にはクラブのオフィスにて31歳で迎える18年6月までの契約延長にサインしている。

 またこの際メッシは、引退前に母国アルゼンチンのリーグでプレーする可能性を再び口にしていた。母国のファンの前でプロとしてプレーした経験のないまま、わずか12歳でバルセロナへ移住した彼にとって、それは残された数少ない挑戦の1つである。

 バルセロナを去る時、メッシは20年に及ぶ輝かしい歴史をクラブに残した上、世界最高の選手としての立場を確固たるものにしていることだろう。そんな彼の忠誠心に疑問の目を向ける余地などないが、別れの時はいつか来る。だがその日が来るのはまだまだ先のことだ。ゆえにフットボール界は、今後も彼のマジックを期待し続けることができるのである。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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