高橋大輔 初披露した新プログラムの可能性=四大陸選手権・男子SP

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SPで4位と出遅れた高橋

新プログラムで臨んだSPは4位と出遅れた高橋。世界選手権での“完全版”披露に期待が高まる 【坂本清】

 フィギュアスケート四大陸選手権が8日、大阪市中央体育館で開幕し、初日の男子ショートプログラム(SP)では日本の羽生結弦(東北高)が、完ぺきな演技とはいかなかったものの87.65点で首位。一方、エース・高橋大輔は新プログラムの『月光』を初披露したものの、ジャンプでのミスが続き82.62点で4位と出遅れた。また、無良崇人(中京大)も得点を伸ばせず78.03点で8位スタートとなった。

「うーん……ちょっと気持ち悪いですね(苦笑)。微妙な感じで終わったので」
 SPの演技後、ミックスゾーンで羽生が語った最初の言葉がこれだった。もちろん自身の演技の出来に対しての感想なのだが、この言葉はそのまま、イマイチ波に乗り切れないで終わった日本人3選手に当てはまるのかもしれない。特に、高橋の新プログラム『月光』が不発。本人は当然のことながら、ファンも不完全燃焼の思いで帰途についたに違いない。

 今シーズン前半は『ロックンロールメドレー』を使用していた高橋だが、異例のシーズン途中での楽曲変更。しかも、米国の60年代ロックミュージックから一転、クラシックの王道とも言うべきベートーベン作曲を持ってきた。しかし、今回の結果だけを見ればこれが裏目に出てしまった。高橋ほどの実力者ならば、4位で良しとはされず、この変更は失敗だと責められても仕方のない結果かもしれない。

「もっと得点を出すことができるプログラム」

初披露の舞台では、ジャンプでのミスが目立った。3月の世界選手権へ向け、さらに磨きをかけていく 【坂本清】

 ただし、高橋はこの四大陸選手権のためにプログラム変更を決断したわけではない。当然、3月に控える大一番・世界選手権(カナダ)を見据えてのものだ。そして、高橋自身がこの新プログラムの可能性を誰よりも信じている。

「このプログラムは気に入っていますし、変更して良かったと思っています。もっと得点を出すことができるプログラムなのに、それができなかった。そこが一番悔しいです」
 冒頭の4回転トゥループでステップアウト、続くトリプルアクセルでの転倒と序盤のジャンプでミスが続いたのは「いろいろと考え過ぎてしまったから」。中盤の3回転−3回転コンビネーションと、後半のステップで挽回したものの、やはり全体の完成度はいま一歩だっただろう。それもひとえに「滑り込みが足りない」からだという。
「フリーと比べたら練習が足りていない。まだ体に慣れていないですし、自然になりきれていないですね。曲に合わせて自分で体を動かさないといけない」

 ただ、裏を返せば、練習量が不十分な中、ジャンプも2つ失敗してなお82点を超えるまずまずの点数をマーク。「もっと得点が出せるプログラム」という高橋の言葉通り、この『月光』が完ぺきに仕上がれば“大化け”する可能性を十分に秘めている。とは言っても、世界選手権まで残り1カ月。悠長な時間は残されていないわけだが、そこは日本男子のエースだ。力強くこう断言した。「このプログラムをこれで終わらせたくない。自分の体になじませられるよう、やります! やるしかない!」
 
 今はまだ微弱な光かもしれない。しかし、1カ月後のカナダでは太陽をもしのぐ輝きを放つプログラムに仕上がっていることだろう。『月光』完全版はそれまでのお楽しみと、期待して待ちたい。

 もちろん、その前に四大陸選手権のフリー(FS)だ。こちらのプログラム『道化師』は逆に完全に自分のものにしている演技。昨年末の全日本選手権では192点を超えるハイスコアをマークした。SP首位の羽生とは5点差。FSでの爆発力がある高橋にとっては逆転可能な点差だろう。吹っ切れた表情を浮かべ、こう逆襲を誓った。「フリーは攻めていきたい。びびったりせず攻めて攻めて、下がることを恐れずに上がることだけを考えていきたいですね」

 不発に終わった『月光』の分まで、攻めの『道化師』で完全燃焼してみせる。9日の夜はきっと、すべての高橋大輔ファン、そしてスケートファンを満足させてくれるはずだ。

<了>
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