フォルトゥナで期待される大前の役割=クラブSDが語った日本人選手の魅力
ピッチ上で対面は果たせず
日本人対決が期待された大前(右)だったが、清水時代の先輩である岡崎(中央)とはピッチ上での対面を果たせなかった 【写真:アフロ】
先週土曜日にエスプリ・アレーナ(デュッセルドルフのホームスタジアム)に集った日本人ファンは、大前元紀がシュツットガルト戦にて驚きの早さで先発イレブン入りすることを期待していただろうが、その思いは落胆に変わった。この23歳の若者はドイツに移籍してから初めて、ブンデスリーガの試合に起用されないままで終わったのだ。
酒井高徳(先発出場)と岡崎慎司(途中出場)という2人の代表選手との顔合わせは、ピッチ上ではなくベンチ裏でのみ実現することとなった。特に同じように2年前の冬にブンデスリーガに渡り、清水エスパルスで3年間ともにプレーした先輩で、香川真司と同じくトーマス・クロートを代理人とする岡崎の成長をピッチ上で感じたかったことだろう。岡崎は短い期間でドイツに適応を果たし、トップリーグでブレイクを祝うこととなった。この試合では71分まで出場を待たねばならなかったものの、岡崎は今日もシュツットガルトのファーストチームに名を連ね続けている。
「日本人選手がいないのは、フォルトゥナだけですよ」
「デュッセルドルフの街では、同胞から非常に歓迎されているね」。ライン地方に位置するこの街には、8000人以上の日本人が暮らす。
「当然、日本人ジャーナリストからの取材申請は増えたよ。たくさんの記者が、メンヘングラッドバッハとのアウエーゲームにまで足を運んだ。彼のホームデビューには、合計8人の記者と2人のカメラマンがやって来た。今回の試合でも、10人もの記者が試合後も彼のことを待ち構えていたよ」
試合後のスタジアムのミックスゾーン(取材エリア)と、ピッチ上に日本人を目にすることができるのは、何もこのクラブだけではない。現在では日本人プロ選手が、ドイツサッカーの最高峰の舞台で10人、ブンデスリーガ2部では2人が戦う。だがドイツで日本人人口密度最大の街は、伝統あるクラブのユニホームを日本人が身にまとうまで、随分長く待たねばならなかった。「もちろん、日本人選手を薦めてくる代理人はいたさ」とヴェルナーは明かす。「彼らは言うんだ。『日本人選手がいないのは、フォルトゥナだけですよ』とね。だがわれわれは、高い移籍金を伴う取引の前には、財政的に適切な準備をする必要があるんだ」。ブンデスリーガ2部では、そうはいかなかったというわけだ。
1部のユニホームに初めて袖を通す日本人
大前の先達たちが、この都市の輪郭を作ってきた。デュッセルドルフ市内でスマートフォンのナビを使ったなら、「リトル・トーキョー」と呼ばれる地域を目にすることだろう。ここには、極東の国の暮らしが凝縮されている。日本の店や銀行、代理店、医者、さらには仏教のお寺までが景色を彩る。名簿に日本語が記されている学校もある。大前はそういった様子を、日本の高校チームの一員としてトレーニングキャンプでやって来たときに目にしているはずだ。こうした点は、彼の妻がこの国になじむ手助けにもなるだろう。昨年12月には、彼女は3人目の子供を出産した。髪を茶色に染めた選手は、スペインはマルベージャでのトレーニングキャンプ中に、「家族はおそらく6月に来ます。子供はまだ生まれたばかりで、すぐには来られないんです」と話した。