アリスター、TKO負けの裏側=UFC

長谷川亮

追い込まれた場面でのもろさ

守勢に回ると一方的にシウバの打撃を受け続けたアリスター 【Zuffa LLC via Getty Images】

 急な失速で、アリスターはPRIDE時代から指摘されてきたスタミナの難点を再び露呈。シウバはテークダウンされグラウンドに移っても巨体を巧みに操りパスガードを阻み、強打のヒットも与えなかった。MMAファイターとして上回る総合力(中でもパウンドを出させない技術)を持ったことが勝利に繋がったと言えるだろう。
“デモリッションマン”と呼ばれるアリスターは、これまで勝利の場合は相手を圧倒するケースがほとんどで、その一方、土俵際に追い込まれるとそのまま土俵を割ってしまう今回のような試合がPRIDE時代から変わっていない。守勢に回ると弱さが出る。

 UFC現ヘビー級王者のケイン・ヴェラスケスはシウバとの対戦時(12年5月)、テークダウンを1度奪うとそのまま立たせずフィニッシュまで持ち込んだ。昨年12月のジュニオール・ドス・サントスとのタイトルマッチでも1Rに右ストレートを効かせると、相手にチャンスを与えず、5Rまで圧倒して勝利した。選手が攻撃力に長けるヘビー級では、1度訪れたチャンスはそのままモノにしなければ、すぐさま我が身のピンチに転じてしまう。
 この日のシウバは窮地に追い込まれても土俵を割らずにしのぎ切り、その後やってきたワンチャンスを逃さずフィニッシュまで持ち込んだ。前半から余裕を見せていたアリスターは、フィニッシュできなかったのこそ気の緩みによるものかもしれないが、追い込まれた場面でのもろさは多くのファイターたちにさらけ出すこととなってしまった。

まだ残されている興味深いマッチメーク

 これでトップコンテンダーから大きく立場を落としたアリスターだが、まだまだ興味深いマッチメークは多く残されている。ともに敗戦後であり、アリスターの出場停止処分で幻となったドス・サントス戦はその最たるものだろう。 だがこの対戦、UFC随一とも言われるハンドスピードを持つドス・サントスに対し、アリスターはK−1時代からパンチをブロッキングで防ぐ傾向があるため、相性的にはあまり良くないと見る。今回もシウバのパンチをブロッキングでしのごうとしたが、そこを縫って打ち込まれTKOに追い込まれた。

 だが、もしドス・サントスを説得力ある形で下すことができれば、再びタイトル戦線に戻る最速の道となる。鳴り物入りで参戦するも、金網対応が進まずオクタゴンを去ったミルコの後に続くか、あるいは復活して新たな道を切り開くか。アリスターにとって次戦が正念場となる。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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