大仁田「時代がハチャメチャを求めている」=独占インタビュー

長谷川亮

「いやぁ普通に殴られたくない…」

大仁田が曙とのノーロープ有刺鉄線電流爆破マッチ、その根底にあるプロレス観を語る 【t.SAKUMA】

 2月8日、大阪ボディメーカーコロシアム(大阪府立体育館)で大仁田厚と曙による2度目の電流爆破マッチが行われる。1月15日には大会を前に試合で使用する有刺鉄線電流爆破バットの公開実験が行われ、報道陣はおろか大仁田本人すら絶句する過去最大の破壊力で度肝を抜いた。

 あえて危険な勝負に身をさらす大仁田の思い、その根底にあるプロレス観とは。“邪道”という生き方を通じメッセージを送る大仁田のスポーツナビ独占インタビュー。

――今日は2.8大阪大会の爆破実験直後のインタビューですが、実際に爆破を目の当たりにしていかがだったでしょうか。すさまじい爆破と破壊力でしたが……。

 いやぁ、素直にバットで殴られたくないなと思いましたね。「こんなのはプロレスじゃない」っていう奴らがいるかもしれないけど、俺はいろんなものを含めてプロレスだと思ってるから。この間話したら、ライガー選手も「やっぱりスポーツライクばっかりじゃなく、こういうのもなきゃダメですよ」って。プロレスっていうのはすごく幅があるからプロレスだって俺は思います。

――確かにあの爆破の中で試合をしようなんていうのはプロレスでしかありえません。

 他にはできないよね。やっぱりその場に来たらビックリしたり、ザワめいたり、家に帰ったら「スゴかったんだよ」って話をせずにいられないような。こんなアイテム(※有刺鉄線爆破バット)を使ったら普通すぐに終わっちゃうのに、そこからまたレスラーは這い上がってくる。そういうところにプロレスラーのスゴさってあるのかなと思う。
 大体固定観念の中でプロレスを語ってもしょうがないじゃないですか。格闘技で、あれだけ全盛を誇ったPRIDEやK−1でさえも今はしみったれてきてしまっている。だからやっぱり時代的に、こういうハチャメチャなものを求めてるんじゃないですかね。

――今回はハチャメチャな中でもとりわけハチャメチャですが、そういった下降気味のマット界の現状を吹き飛ばそうという思いがあったのでしょうか?

 そうだね。やっぱり客がハラハラドキドキしないと。マスコミだってそう。マスコミっていろいろなものを見てるし、ある種冷めてる訳じゃない。でも、やっぱり俺はマスコミの人たちも一緒に踊るぐらいのプロレスをやらないとダメだと思う。飲みに行ったりした時、「あれは面白れぇんだよ」って語っちゃうぐらいの。お互いこれで飯を食っているけど、同じプロという者同士、自分の感覚・感性を上回っていかないと。

「新日本だけが元気じゃ面白くない」

1月15日、有刺鉄線爆破バットのデモンストレーションが行われ、その破壊力が明らかに 【t.SAKUMA】

――昨年は曙選手はもちろん、初代タイガー、果てはノアのKENTA選手まで、こちらの予測を上回るところまで抗争を仕掛けていきました。

 今年もやるよ。もうやってるけどさ。こないだは小林(邦昭)と戦って、それがまた続くだろうし、ノアだってまたいってくるだろうし。新しいところも開拓しようと思ってる。
 俺のことを上げたくないリングはたくさんあるかもしれないけど、そこに上がるからこそ価値があるんであって、井の中の蛙になってたって仕方ないじゃない。今はどこのリングでも上がれるっていうのがあるけど、俺だけ嫌われてるから俺が上がると話題になる(笑)。みんな絶対ないだろうって思ってるからね。
 まぁ、俺は新日本のあり方もいいと思うし、あとは全日本・ノアっていうのが元気を出さないと。新日本1つだけ元気じゃ面白くないよ。

――大仁田さんは異質の存在として、プロレス界に刺激・元気を与えていると。

 だから別に俺を受け入れろとは言わないけど、劇薬的なものがいないと。猪木さんだって劇薬みたいな人だったんだから。俺は偉大な人だと思うよ。

――大仁田さんのそういうバイタリティの源というのは一体どこから来ているんですか?

 好きなんじゃないですかね。やっててアバラは折れるわ、去年は胸の骨が折れて、俺はあんまり「痛い」って言わないけど、あれは痛かった。でもそれも今は楽しい思い出だし。今年も年内最後の爆破が8月31日って決まってるから、そこまで突っ走っていきますよ。

「曙はもっとひねりがほしい」

昨年8月に「ノーロープ有刺鉄線バリケードマットダブルヘル・メガトン電流爆破デスマッチ」で激突した 【t.SAKUMA/佐藤崇】

――昨年8月の電流爆破で終わらず、なおも曙選手を執拗に追い掛ける訳というのはなぜなのでしょう。

 もう乗っかられただけでこっちがヒイヒイいう体格だし、やっぱりあれだけのキャラクターってなかなかいないじゃない。だから俺は大事にするべきだと思う。みんな使い方を誤ってるよね。K−1でダメだったからそれでプロレスでどうのこうのじゃなく、いいところを引き出せるのがプロレスだと俺は思う。まだいいところを生かし切ってないと思いますよ。だって俺とやってる時は伸び伸びしているから。
 だけど相撲取りって何でもかんでも手形でオッケーみたいなさ。全部手形で、手形を押せばいいと思ってるけど、そういうところが抜けてないよな。もっとひねりがほしい。そういうところが大雑把っていうかさ。よく遅刻もするし。俺も遅刻するけど、あいつには指摘されたくないんだよ。


――そんな曙選手と最大の決戦になるだろう大阪大会が近づいてきました。最後に意気込みをお願いします。

 プロレス界では新日本が独走してますけど、俺はやっぱり対峙するものとか、それに挑戦するものが出てこなければプロレス界は活性化しないと思う。みんなは反発するかもしれないけど、「大仁田もやってるんだから俺もやれるぞ」っていうレスラーがどんどん出てくることが俺はプロレス界にプラスなことだと思うし。
 あとはやっぱりプロレスの面白さっていうのを次の世代にも伝えていかないと。今の若い世代っていうのは他にもいろいろなことができるけど、やっぱり携帯なんかでは見てほしくない。臨場感が出てこないし、やっぱりライブで、多くの人に来てほしい。それで多くの人に来てもらって、「ファイヤー!」が嫌なら「ダー!」ってやっても構わない。だからファンのみなさんも大仁田厚を見捨てずに、応援してプロレス界に協力してください。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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