UAE移籍の森本貴幸は復活できるのか=かつて将来を嘱望された男が挑む再起への道
トップフォームからはほど遠く
失点の起点となってしまい、うつむく森本。今季は出場機会を得られず、トップフォームにはほど遠い状態だった 【Getty Images】
移籍はもはや不可避の状況だった。昨シーズンのノバラでの1年間は、ひざの手術や多発する筋肉系のトラブルに悩まされた。それまでも出場機会に恵まれず、心機一転を懸けて移籍したはずが裏腹の結果となってしまう。その後ノバラのセリエB降格に伴い古巣カターニアがパスを半分買い戻すも、彼は移籍を模索する。ただ、ギリギリまで待ったものの引き取り手は現れず、彼はカターニアへ残留することになった。しかしこれが、さらなる不振の連鎖を招いた。ゴンザロ・ベルヘッシオがセンターFWのファーストチョイスにいる状況を覆すことができなかったのだ。
ロランド・マラン監督はベルヘッシオを固定させるだけでなく、「チームを助ける動きという点では森本よりも代役にふさわしい」という理由で、セリエAはおろかBの出場経験すらなかった21歳のスレイマニ・ドゥカラをバックアップととして選ぶ始末。それでも森本にはセリエA通算19ゴールという実績があり、11月末のパレルモとのシチリアダービーでは先発起用もされている。しかし得点は決められず、それ以前にトップフォームからもほど遠かった。
エリア内でパスを受けても反転しきれず、マーカーの裏を取って果敢にスペースを攻略するキレも欠けている。何より試合から遠ざかっているため周囲との連係不足は明らかで、縦に走らせるスルーパスやクロスも出てこずに孤立気味となった。それでも試合に出ているうちにリズムはつかみ出し、エリア内でボールを触れるようになるのだが、それと同時にシュートミス。「前でボールを触れたと思うし、楽しかった」と本人が手応えをつかみ出したころには交代だ。結果が出ず、立場は変わらず、再び出場機会は遠ざかる。そして12月21日、アウエーのペスカラ戦では、1−1の後半に得点を期待されて出場しながらカウンターの“逆起点”となってしまう惨状。そしてアディショナルタイムに直接FKが決まり、チームは負けた。
移籍以外に道はなかった
「1月には出る可能性は高い。われわれはそのために動いている。ドイツ、オランダ、そしてポルトガルのクラブと交渉中だ」。代理人のフランチェスコ・ブランキーニ氏は、森本移籍に向けて複数のクラブとコンタクトを取っていた。ただ、決定打はない。ノバラから森本の保有権を全額買い戻し、14年6月まで契約を結び直したカターニアの意志は、完全移籍による売却。結果の出せていないFWに対する投資を躊躇(ちゅうちょ)したのか、彼らを納得させるオファーは届かなかった。
「本人は欧州移籍を望んでいる。Jクラブへの復帰はあり得ない」とブランキーニがこだわる一方、焦燥を露にする森本は「今試合に出続けたいという気持ちがあるので、可能性としてはなくはないと思います」と告白するなど、意志の食い違いも見られた。