躍進する桐光学園が得た“最後の一歩”=挫折を経て作り上げた堅牢な守備組織
桐光学園を支える攻守のコンセプト
全国高校サッカー選手権大会で16年ぶりにベスト4進出を決め、躍進する桐光学園 【写真は共同】
激戦区の神奈川を勝ち抜くのは容易でなく、全国的に名を知られる強豪チームでありながら、この大会の出場回数は7回と少ない。しかし、今季は確実な手ごたえとともに躍進を見せている。初戦では前回準優勝の四日市中央工業(三重)を4−2で撃破した。3回戦は佐賀商業(佐賀)を3−0と完封し、準々決勝では作陽(岡山)に苦戦を強いられたが、アディショナルタイムのゴールで試合を制する勝負強さを見せた。
チームの特長は、堅実な守備をベースとした勝負強さ。作陽戦で見せた“最後の一歩”を踏み出してのシュートブロック連発は、守備意識の高さの象徴的な場面だった。準決勝に向けた練習の開始日となった8日にも、これまでの試合の映像を見ながら、守備時の体の向きなど細かい部分をチェックし、ぬかりはない。
攻撃面に目を移すと、選手の個性が際立つ。4バックの両サイドは運動量が豊富で攻撃参加が多く、特に右DF大田隼輔は激しいアップダウンで観衆の目を奪う。中盤は大会きってのプレーメーカーである松井修平がパスワークを支え、スピードと技術を兼ね備えた橋本裕貴がドリブルで突破を図る。前線は、プリンスリーグ関東1部の得点王で一瞬のスピードに優れる野路貴之と、中学時代にはサッカーと並行して取り組んでいたラグビーでウイングやセンターを務めていたというフィジカル能力の高い市森康平がツートップを組む。桐光学園のサッカーを彩る「チーム全体での堅守」と「個性を組み合わせた攻撃」は、名将が苦難の末に行き着いたスタイルだ。
チームを変えた結果へのこだわり
方針転換のきっかけの一つは、この大会になかなか出られないことだった。第79回、第80回大会の神奈川県予選は決勝戦で、第81回大会は準決勝でいずれもライバルの桐蔭学園に敗れた。佐熊監督は「以前は『負けたとしても内容が大事なんだ』という、逃げるような考え方をしていた時期もあった。もちろん、今でも勝てば何でもいいわけではない。ただ、経験を積んで『勝利と内容は、同時に追求できる』と思うようになった」と、結果へのこだわりを強めた経緯を明かした。