権田修一、練習参加で高まる欧州移籍への意識=日本人GKがセリエAでプレーすることは可能か

神尾光臣

海外でのプレーに対する思いは強い

コーチのモリーノ氏(左)は権田(右)を「敏しょう性と技術にはいいものがある」と評価した 【神尾光臣】

 それにしても、違和感なく練習に溶け込んでいた。練習の合間で他の選手たちと談笑に応じ、通訳も付けていない。「前回行った時にコミュニケーションを取れなかったのが少し悔しかったのと、代表の監督にたまたま(アルベルト・)ザッケローニさんが来て、GKコーチに直接話が聞けたらと思って」(権田)、イタリア語を学んできたのだという。

「本当にレベルが高いです。このチームにブラジル人が2人いるんですけど、レベルが高いGKがそろっているなと。あとみんないい人ばっかりですし。練習生で行って、相手にしてくれない、というんじゃなく。いじり半分で『ホンダ』って言われるんです。車のホンダが有名じゃないですか? それで『おまえ車だろ』とか」

 練習後に明るい表情で現れたホンダ……いや権田は、いろいろと興味深い話をしてくれた。正GKラファエルを始めとしたベローナの選手のレベルについても、感銘を受けていた様子だ。やはり指導には差があるのかと思い、話を聞いてみると、こんな答えが帰ってきた。

「イタリアだからどうとかではなく、それぞれ色がある。日本でも海外でも一緒だと思うんですけど、ゴールを守るための方法論がちょっと違うだけであって。こっちのGKコーチはボールに対してアタックしろというのをすごく言う。ライン上に止まってというのではなく、クロスにしても積極的に(アタックしろ)と。それが日本人は苦手だと思われている。でもどこのチームも監督がいて、求めるサッカーにGKコーチも順応する。ずっとセットで動いているじゃないですか。ラインをしっかりコントロールする分、裏へのボールが増えたりだとか、クロスからのボールが増える分、そこでの役割が大きくなるのかなと」

 海外でのプレーに対する思いは強い。その中で最終目標はやはりイタリアのようだ。

「海外に行けばいいというものではないですけど、代表で、海外でやっている選手たちの強さを感じるんです。こっちに来ても、FC東京のことは当然のように知らない。いつかイタリアでプレーしたいというのはありますが、直で来られないとしても、川島選手みたいに、まずは欧州に入ることで、こっちで知ってもらえることもあると思う」

ブラジル人GKも以前は評価されていなかった

 またイタリアの良さについては、ミラノにいるFC東京の元チームメート(長友)からもレクチャーを受けている。

「特に組織の部分。インテルにしても、(長友)佑都君も言ってますけど、ゴール前の精度は攻守両面ですごい高いと。インテルだったら(ディエゴ・)ミリートみたいな選手がいて、どこのチームにもそういうストライカーがいる。それに対し、組織で守るというのが質高くできている。それは佑都君も感じていると言っていました」

 今回の来訪は、1月の移籍に向けたトライアルではなかった。セリエBではそもそもEU圏外の選手獲得が認められていないのだ。しかし、権田はその身に海外を直に意識するため、欧州へ足を運んだ。将来を見据えてだ。

「今回は純粋な練習参加だ。枠を考えれば外国人GKに枠を充てることは難しい。ただ、何が起こるか分からないのもサッカーの世界。もちろん今後(移籍に)進展する可能性もなくはない。今でこそブラジル人GKはイタリアに多いが、以前は評価されていなかった。その流れに日本人が加わる可能性だってある」

 ベローナのソリアーノ強化部長は語った。川島が、また権田が、いつかその系譜につながることができれば最高だ。

<了>

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著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

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