京都橘に見る“共学化した私立校”の躍進=下剋上極まる高校サッカー新時代
稀少となった“伝統校”の名前
3回戦の丸岡戦で先制ゴールを決めるなど、ここまでの対戦校は京都橘・小屋松を止められていない 【写真は共同】
今年の選手権で言えば、京都府代表・京都橘がその象徴ということになるだろうか。
筆者はどうも高校サッカーのことをちょっとは知っている人だと思われているらしく、近年は毎大会「この高校、どういうところなの?」といった質問を受けているような気がするが、今年は京都橘が「どうなの?」となる対象のようだ。「いや、京都橘は前から結構強かったじゃないか」と思ってしまう部分もあるのだが、なるほど確かに選手権に出てくるのは2008年度大会以来2度目のこと。しかも早期敗退していたとあっては、名前が記憶に残っていないのも無理はない。
京都府予選では3番手の扱いだった
中盤では、ボランチの宮吉悠太が実兄・拓実(J2京都サンガF.C.)とは一味違った巧緻(こうち)さでゲームに絡み、最終ラインでは1年生ながら高い技術と判断力をベースに奮闘する林大樹と高さで勝負できる橋本夏樹のセンターバックコンビが光る。左サイドバックを務める主将・高林幹もハイレベルな選手だが、2、3回戦はまさかの腸炎で欠場。だが、その穴を代役・吉中波緒人が埋めるあたりは、穴を穴と感じさせない、層の厚みも見せ付けた。
これだけのチームが選手権本大会どころか、京都府予選の段階で“本命”どころか“3番手”扱いだった。このことは、逆説的に高校サッカーのクオリティーが底上げされていることを裏付けていると言えるだろう。サッカーの裾野が全国各地に拡大し、ノウハウが拡散することで、戦力の均衡化が進んだ。新たにサッカーへ(この場合はサッカー部へ)大きな投資を行う私立校の絶対数が増えているという事実が、こうした傾向を後押ししている。その一つの象徴が、京都橘なのだ。