山で東洋大を逆転した服部、往路V呼んだ日体大の勝利への執着=駒大OB・神屋氏が箱根駅伝・往路を解説

構成:スポーツナビ

箱根駅伝・往路、ガッツポーズでゴールテープを切る日体大の3年生主将・服部 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】

 第89回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の往路が2日、東京・大手町の読売新聞東京本社新社屋(建設中)前から箱根・芦ノ湖までの5区間、108.0キロで行われ、予選会から本戦出場を果たした日本体育大学が5時間40分15秒で26年ぶりの往路優勝を果たした。

 スポーツナビでは駒大OBで箱根駅伝に4年連続(1999〜2002年)出場し、武蔵野学院大学陸上競技部監督の神屋伸行氏に往路のレース総括と復路の展望をうかがった。

強い向かい風をものともしなかった5区・服部

 戦前では東洋大と駒大の評価が高かったと思いますが、日本体育大も1区と2区である程度流れに乗れれば上位にくるのではないかと思っていました。日本体育大は見事に1区から良い流れをつかみ、自信のある服部(翔大)くんでひっくり返す、計算通りのレース運びができたのではないでしょうか。

 逆転優勝を演じた服部くんですが、どの大学も今日の強い向かい風に苦しんでいる中、服部くんはピッチ走法で重心が低く、さらに粘り腰のある走り方をしていたので、“良い風”が吹いたと思います。また、東洋大の5区・定方(俊樹)くんとの経験の差も大きかったと思います。そういう意味では、東洋大は4区までに、酒井(俊幸)監督の言っていた2分のリードが保てず、さらに(山を)上りきるまで粘りたかったところを服部くんに引き離されてしまったのが大きな差につながったと思います。

 日本体育大は前回シード落ちしましたが、もともとは3位、4位争いができる力のあるチームです。そこに今季、3年の服部くんを主将にし、ストイックさ、まじめさ、アスリート感覚を徹底的に身につけてきて、勝利への執着が見られました。

 これまでは少し負けるとあきらめてしまう走りが見られたチームだったのですが、3区の山中(秀仁)くんなど離されても追いつく粘り強さ、1秒の大切さ、責任の重さを垣間見ました。こうした選手の精神的な成長が勝ちにつながったと思います。

東洋大は3位も順調な往路、駒大は窪田で負けたインパクト大

 東洋大に関しては、6区に市川(孝徳)くんもいるし、復路の層も厚いので順調に来た往路だったのではないでしょうか。東洋大は日本体育大の実力と比べると、大きく変わらないので、6区の出足次第だと思います。6区の市川くんで追いつき、7区で『ヨーイ・ドン』にできればおもしろいと思います。8区には実績のある大津(顕杜)くんもいますし、全日本大学駅伝で駒大・窪田(忍)くんに負けましたが、1年生の服部(勇馬)くんもいますので(補欠でエントリー、当日の区間変更で出場が可能)、市川くんでどれだけ差をつめられるかが鍵になると思います。

 早大は、1区、2区でもう少し前にいて3区の大迫(傑)くんでトップに立てれば、往路優勝も見えたと思います。やや1区で離れすぎましたね。ただ、実力を示し、2位で終えたのでまだ総合優勝のチャンスは残したと思います。

 一方、駒大はスピード勝負に持ち込みたかったのだろうというオーダー配置だったのですが、スピードを生かしきれないレース展開になってしまいました。非常に強烈な向かい風でしたので、スタミナがありピッチ走法のチームが割と安定したレースを展開し、スピードを生かそうというチームが出遅れや棄権につながったように思います。
 特に2区の窪田くんで東洋大・設楽啓太くんの前に行けなかったのは大きかったと思います。エースは絶対に勝たなければいけません。全日本大学駅伝も結果的に窪田くんで勝ちました。その窪田くんで負けたというインパクトは、その後のチームに大きな影響を与えたと思います。

復路、日体大優位は変わらず…シード権争いは混戦模様

当日の区間変更で主要区間でのエントリーが見込まれる青山学院大・出岐 【スポーツナビ】

 明日に関しては、逆転があるとすれば、復路にエース格の選手を残しているチームだと思います。復路が今日の逆で追い風になれば、追う側も優位に運べるかもしれませんが、万が一、風が巻いて横風になれば、今日みたいな粘り合いのレースになってしまいますね。なので、前半に優位な日本体育大が有利になります。

 青山学院大は5分以内であれば、出岐(雄大)くんのコンディション次第ですが、チャンスはあったと思います。出岐くんの区間配置によるかもしれませんが、出岐くんと小椋(裕介)くんでは逆転するのはちょっと厳しい状況だと思います。

 シード権争いでは今日、集団でタイム差が出ない展開だったので、流れに取り残されてしまうと、シード権争いに加われないと思います。ただ、タイム差を見ると、5位から13位くらいまでがチャンスだと思いますし、ちょっとした油断であっという間にシード圏外に弾かれたり、上位に上がったりするでしょう。力のあった城西大、中大が途中棄権ということで、下位に沈んだチームのシード権は難しそうですね。タイム差がないので大集団での競り合いが最後まで進むのではないでしょうか。

<了>
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