好敵手として切磋琢磨する大会屈指の2トップ=高校選手権・注目校紹介 四日市中央工編

安藤隆人

前回大会では決勝で市立船橋に敗れ、準優勝に終わった四日市中央工。田村(左)、浅野(左から3番目)らを中心に目指すは全国制覇のみ 【写真は共同】

 第90回全国高校サッカー選手権大会で2人のストライカーが大会を通じて大きな注目を集めた。浅野拓磨と田村翔太。話題となったのは、2人の有能なストライカーが同じチームで、同じ2年生であったこと。

 三重の名門中の名門・四日市中央工の2年生ツートップとして、1回戦から選手権の舞台に登場すると、ともに驚異の得点力を発揮し、ゴールを量産。浅野が7得点を挙げ、得点王に輝けば、田村も6得点で単独2位に。2人だけで22得点中、13得点をたたき出し、チームを準優勝に導いた。
 
 名門の20年ぶりのファイナル進出の原動力となった2人は、今年、最高学年を迎え、ともにJリーグに進路を決めた。浅野がサンフレッチェ広島、田村が湘南ベルマーレ。プロ内定ツートップがいよいよ迎える高校最後の冬に向けて、どのような思いでいるのか。その心境に迫った。

浅野「目指すところは『去年を越す』ということ」

前回大会得点王の浅野は、悲願の優勝だけでなく、2年連続での得点王を狙う 【安藤隆人】

――まずは選手権出場おめでとうございます。

田村 ありがとうございます。

浅野 ありがとうございます。正直、ホッとしました。

――いよいよ最後の選手権が始まります。今大会は2人への注目度も非常に高いものがあります。

浅野 僕は昔からそうなのですが、自分が見られるプレッシャーはありますが、そんなに気にしていません。気にせずにできているかどうかは分かりませんが、平常心でやらないといけないということは、新チーム立ち上げ時からずっと思っています。去年良い結果(準優勝)を出したからといって、今年も強いとは限らないので、今年は今年のチームとして昨年とは全く別と捉えています。でも、目指すところは「去年を越す」ということ。意識してやらなきゃいけない部分と、意識してはいけない部分があるので、そこをうまくバランスを取っています。その中で去年できなかった全国制覇は、やはり明確な目標となります。

田村 僕も浅野と一緒でこういう取材を受けるようにはなりましたが、意識はしていません。試合をやる中で注目をされることは嫌いじゃないです(笑)。初戦の相手が桐光学園(神奈川)となったときは優勝候補の関東のチームなので、すごく注目されてお客さんもたくさん入るんじゃないかなと真っ先に思いました(笑)。そこを思い切り楽しもうと思ったので、注目されるのは嫌じゃないですね。

――浅野選手は卒業後、広島に入団が内定しました。

浅野 練習参加したときにすごく雰囲気が良くて、やりやすい環境だと思いました。サッカーも攻撃的だし、ボールの支配率もJリーグの中でトップクラス。その中で自分の攻撃力をもっと磨いていきたいと思いました。それに佐藤寿人さんというお手本中のお手本のFWがいるので、良いところはどんどん盗み、いつかは自分が試合に出られるように頑張りたいと思いました。

――田村選手は湘南に入団が内定しました。

田村 僕も浅野と一緒に広島の練習には参加していたのですが、自分は湘南に行くことを決めました。湘南のスカウトの人もいろいろな試合を見に来てくれていて、そういうところで自分を必要としてくれているのが分かりました。チームも雰囲気がすごく良くて、若いというのもあって、自分も溶け込みやすかったです。来季はJ1に上がるので、より競争は厳しくなると思いますが、試合に出られるように頑張りたいと思います。

田村「今年は僕が得点王を取りたい」

前回大会では、浅野に次ぐ得点ランク2位だった田村。今年は浅野を上回ることはできるのか 【安藤隆人】

――2人のコンビネーションに関してはいかがですか?

田村 良い時と悪い時はありますが……(笑)。

浅野 悪い時はどんどん距離が遠くなってしまうので、2人の距離感を試合の中で意識するようにしています。

――ピッチ上での距離感が遠いと感じることはありますか?

浅野 良い時はすごく良いんです。ボールを持った瞬間に2人だけで崩せるシーンもありますし、何でもできるんです。でも悪い時はイメージがあってないというか。

田村 動けていないんです。どっちかがボールサイドにいる状態だけで終わっている時があります。

浅野 チーム全体がうまくいかない時は、「自分がやらな」と思ってしまいます。その気持ちが強くなってしまうので、自分しか見えていないんです。だから苦しい時にこそ、もっと周りを見て、良い判断をしないといけないと思います。判断のところで自分はまだまだ甘いと思っています。良い判断をするためにもっと周りを見て、もっと余裕を持ってプレーしないといけないです。

田村 良いときに良いプレーをするということは普通なので、悪い時にこそ悪いなりに良いプレーをするためには、浅野が言ったようにもっと周りを見ていないといけない。自分1人だけの関係ではないので、2人で崩せるように距離感を大事にしたいです。

――目標はもちろん全国制覇ですね?

浅野 そこは揺るぎないです。2年連続得点王も目標です。

田村 そこは僕も一緒です。FWなんで今年は僕が得点王を取りたいです。

――昨年と同様に2人で得点王を争うことになるかもしれませんね。

田村 そうなったら幸せですね。そうなるということはチームが勝ち進んでいる証拠なので、ぜひそうなりたいです。

浅野 (大会を勝ち進んでいき)自然に(2人で)争っていればと思います。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント