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新鋭校の台頭や人材の拡散が進む高校サッカー
“戦国時代”を迎えた選手権の新たな楽しみ方

伝統校も容易に勝ち進めない時代

抜きん出た選手がいなくなったという話もあるが、大津の植田をはじめ、J内定の注目選手も数多い
抜きん出た選手がいなくなったという話もあるが、大津の植田をはじめ、J内定の注目選手も数多い【安藤隆人】

 91回目の高校サッカー選手権が12月30日より開幕する。今年も常連校の地域予選での敗退が相次ぎ、あらためて現代の高校サッカーが、裾野の拡大に伴う“戦国時代”にあることを印象付けた。連続出場はわずか13校に過ぎず、そのうち10年以上連続して出場しているチームは星稜(石川)と青森山田(青森)の2校のみである。星稜も今年の県予選ではあわや敗退という土俵際まで追いつめられており、青森山田も準決勝では相手に先制を許して前半を折り返す苦しいゲームだった。どちらも決して余裕の突破ではなかった。


 サッカーがメジャースポーツとしての地位を確立し、裾野が拡大していることに加えて、全国的な共学化の流れもあって、大会の参加校は少子化にもかかわらず増加傾向にある。私立新鋭校の台頭は全国各地で目覚ましく、これまでほかのスポーツに傾注していた高校がサッカーにも投資を始めたり、あるいは女子校から共学化したチームが男子生徒へのアピールの目玉としてサッカー部に注力するといった事例は珍しいものではなくなった。Jリーグ下部組織の拡大に伴う人材の流出は指摘されて久しいが、私立新鋭校の台頭に伴う人材の拡散も進んでいると言える。結果、伝統校の昔ながらのアプローチが通用しない時代になっているのは間違いない。

J内定選手は10名近くで人材は豊富

 ただその一方で、人材の“絶対量”も増えているという感覚もある。抜きん出た選手がいなくなったという指摘もあるが、それは選手のアベレージが向上していることの裏返しである。今年の高校選手権で言えば、FW浅野拓磨(四日市中央工→サンフレッチェ広島)、MF望月嶺臣(野洲→名古屋グランパス)、小塚和季(帝京長岡→アルビレックス新潟)、DF植田直通(大津→鹿島アントラーズ)ら10名近くの選手がJリーグへ進む。また、DF室屋成(青森山田→明治大進学予定)のように、J1クラブからオファーを受けながら、あえて進学という道を選ぶタレントもいる。FW宮市剛(中京大中京)、MF谷村憲一(盛岡商→モンテディオ山形)、渡辺夏彦(國學院久我山)、DF三浦弦太(大阪桐蔭→清水エスパルス)など多くの有力選手が予選で消えているにもかかわらず、タレント不足の大会という印象はない。何より、こういうときに名前の出てこない選手にも、「楽しみ」と思えるタレントはいるのだ。


 選手権が「日本の育成年代の有力選手を総覧できる大会」でなくなっているのは確かだろう。拡散の結果として、予選でいなくなる有力選手、有力校が多くなりすぎたし、何よりJリーグの下部組織にその年代のトップ選手の過半が在籍していることは紛れもない事実である。この大会を見て日本の育成年代全体について語るのは無意味だとさえ言えるかもしれない。だがそれは、この大会から有望な選手がいなくなったということではない。そして、外野の人間が選手権を楽しむ動機付けが消えたということでもないだろう。

川端暁彦
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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