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甲府のコンディショニングが生んだ脅威の“3パーセント”
J1昇格を支えた黒子の力

「サッカーをすることで、サッカーをうまくする」

甲府のコンディショニングを支えたトレーナーの谷真一郎
甲府のコンディショニングを支えたトレーナーの谷真一郎【イースリー】

 2012年のJ2リーグで24戦無敗の記録を打ち立て、優勝を決めたヴァンフォーレ甲府。2位の湘南ベルマーレに勝ち点差11をつけての独走優勝だった。ヴァンフォーレにはJ2得点王のダヴィがいたとはいえ、ほかのクラブと比較して、戦力的に飛び抜けていたわけではない。そんなチームがなぜ、圧倒的に勝利を積み重ねることができたのだろうか。その疑問を解くひとつのカギは“コンディショニング”にあった。


 今季開幕前、新監督の城福浩とフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎との間で、新体制下のチーム作りにおいて、極めて重要な会話が交わされた。


 城福が谷に聞いた。「どんな感じで、選手のコンディショニングを作りたい?」7歳上の新指揮官に聞かれた谷は、こう答えた。「サッカーをすることで、サッカーをうまくしていきましょう」


 サッカーをすることで、サッカーをうまくする……。禅問答(ぜんもんどう)のような表現の本質をつかむには、少し説明が必要だ。選手としてレベルアップするためには、1分、1秒でも長くピッチに立ち、トレーニングを重ねることが重要になる。しかし、実際はケガによって離脱し、シーズンを通じてトレーニングや試合にフル参戦できない選手も少なくはない。


「選手はみんな、良いシーズンを送りたいと思っています。では、選手にとって良いシーズンとはどのようなものか。それは、常にピッチに立ち、自分の最大限のパフォーマンスを発揮し続けること。コンディショニングとは、そのための身体をつくることなのです」と谷は言葉に力を込める。

キャンプでは“身体を追い込む”ことが当たり前?

 ピッチに立ち続けるために必要なこと。それは、ケガで中長期の離脱をしないこと、である。そのため、谷はチームが始動する1月に、監督、スタッフ、選手の前で、シーズンを闘いぬく上でコンディショニングがいかに大切かを語り、どのようにしてフィジカルを高めていくかというプレゼンテーションをした。そこでは、『過負荷―超回復の原則』を紹介し、選手とスタッフが考え方を共有する狙いがあった。


「簡単に言うと、身体は負荷がかかると、次にはその負荷に耐えられるよう、以前よりも良い状態を作りだそうとします。それが『過負荷―超回復の原則』です。つまり、身体の特性をコントロールしながら、サッカーに必要な要素をタイミング良くトレーニングしていくことが重要なのです」と谷が説明する。


 これは、筋肉を例にするとわかりやすい。急に筋トレをすると、筋肉痛になる。その後、しっかり休養と栄養をとることで、筋繊維が修復し、以前より強い状態になる。これが『過負荷―超回復の原則』である。


「多くの選手が、開幕前のキャンプでは連日追い込んで、疲れた状態でサッカーをするのが当たり前だと思っています。トレーニングで身体に負荷をかけるのはいいのですが、しっかりとした栄養、睡眠をとらないと、『超回復』しません。超回復を待たずにトレーニングを重ねていくと、負荷ばかりかかってしまい、疲労が蓄積しケガをする……というネガティブなサイクルにはまっていきます」


 谷がS級ライセンスの講習をしたとき、ある元日本代表選手が「その考え方は一般的なんですか? キャンプでは身体を追い込んで、辛い思いをするものですよね」と、聞いてきたことがあった。そこで自身の考え方を説明すると、「それはいい。僕も現役時代に知っておきたかったです」と納得したという。

鈴木智之

スポーツライター。『サッカークリニック』『コーチユナイテッド』『サカイク』などに選手育成・指導法の記事を寄稿。著書に『サッカー少年がみる みる育つ』『C・ロナウドはなぜ5歩さがるのか』『青春サッカー小説 蹴夢』がある。TwitterID:suzukikaku

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