鈴木明子、「悔しさ」実感で蘇る4年前の記憶
鈴木だけが違った、GPファイナルの位置付け
今季苦しんでいるSPだが、NHK杯の失敗で「吹っ切れた」と話す鈴木。GPファイナルの出来には笑顔を見せた 【坂本清】
しかし、鈴木明子にとっては違った。
「五輪までの現役をはっきりと宣言していない私にとって、ソチの会場に行ってみて、自分に何らかの変化があるのか、何も感じないのか、分からない。どんな気持ちになるのか楽しみだし、感じたことを大切にしたい」
そう心に秘め、ソチの氷へと降り立った。
今季の前半は、ショートプログラム(SP)に手を焼いていた。映画「キル・ビル」のテーマ曲を使った、力強さを前面に押し出すプログラム。「強い女を演じたい」と振付師に曲選びをお願いし、決まった曲だったが「まさか私がキル・ビルをやるなんて思ってもみなかった」と鈴木。映画の主人公は女性だがフィギュアスケート界では、男子選手が選ぶことはあっても女子選手が使うことのあまりない、硬質な力強い曲調だ。「曲の強さに自分が負けてしまうところがある。自分の強さと曲の強さが合わさったときに、本当の強さが際立つプログラムになると思う」と言い、素のままではキル・ビルの世界観を創り上げることができず、難しい挑戦だった。
結局、シーズン前半のスケートカナダ、NHK杯は、2戦ともに、ショートはジャンプミスがあり5位発進。NHK杯のビデオを見返すと、鈴木は自分の演技が、自分が感覚で思っているのと違って見えていることに気付いた。
「何だか自分から出ているもの、目線などに自信のなさがある。自分のやろうとしている演技と、お客さんから見た演技にズレがあるという感じ。ファイナルはお客さんをよーく見て、強い気持ちでいこう」
工夫が実ったSP「自分らしく滑ることができた」
「ジャッジの目の前だと思ったらあらって感じ。そこでアピールしても何にも点が変わらないじゃない、って。それで本番は調整して、ジャッジの前で止まってアピールしました」
なんとも可愛い、そして、したたかな工夫! 結果、鈴木は力強い演技で、首位の浅田真央と2点差以内の僅差で3位発進となった。
「2試合ともショートで出遅れて、自分でも苦手意識が高くなっていたんです。でも、NHK杯でジャンプに大きなミスをしてしまって、もう吹っ切れた、怖いものはない、攻めようって思ったら、自分らしく滑ることができました」
と笑顔を見せた。