高橋大輔がつかんだ成功体験 SP首位からの精神コントロールで優勝=GPファイナル
SP首位という緊張
SP首位で発進した高橋。「すごく緊張」しながら、フリーに臨んだ 【坂本清】
19歳での初出場から、けがで休んだシーズンを除いて毎季グランプリ(GP)ファイナルに進出はするものの、優勝だけは壁に阻まれてきた高橋大輔。8日、7度目のGPファイナルで日本男子初のタイトルをつかんだ。
高橋は言う。
「順位を考えずに、自分の演技をできたのが良かった」
一瞬、当たり前のように聞こえるセリフ。しかしこの言葉こそが、今大会で高橋が見せた成長のカギだった。
これまで7度のGPファイナルのうち、07年、09年はショートプログラム(SP)で首位に立った。しかし07年は、首位に立つと「すごい緊張でした」と言い、フリースケーティング2位で総合2位に。09年は「気負ってしまった」と言い、4回転で転倒、トリプルアクセルはパンクするなどジャンプミスを連発し、総合5位と苦杯をなめた。
一方、SP首位でなければ勝てるかというと、
「SPプログラムで2位や3位だと、優勝したいという気持ちが強く出過ぎる」
と言う。こういった心理的なコントロールはどの選手も抱える課題だが、つとに若手選手は勢いに任せがちになる。経験豊富な26歳は今シーズン、SP後の精神コントロールを重要な課題に位置付けた。
テレビでチェック「みんなレベル高い」
「(直前に行われた)スケートアメリカとスケートカナダをテレビで見たんです。日本男子だけじゃなくて全員のを、気になって見ちゃって。みんなが良い成績を出していたので、『レベル高いな、4回転必須だな』って。普段だったらここまで動揺しないのに、動揺しちゃったんです。それだけ自分が弱いってことです」
高橋は考えた。
「やっぱりアスリートだし順位のことは漠然とは気にするけれど、それとは別に自分の意識をコントロールしないといけない」
SPの順位に捕らわれることなく、フリーでどこまで自分の演技に集中できるか、それがGPファイナルの課題となった。