宇佐美貴史、ピッチ上の居場所を求めて=先発を外れる日々でつかんだ手応え

了戒美子

出場機会を求めた先にあった試練

先発出場から遠ざかり試練の時を迎えている宇佐美 【Bongarts/Getty Images】

 11月、FIFAワールドカップ(W杯)・ブラジル大会アジア最終予選の第5戦・オマーン戦に臨んだ日本代表メンバーに招集されてからというもの、宇佐美貴史の境遇は恵まれていない。18日のボルフスブルク戦はベンチから外れ、続いて25日のレバークーゼン戦は83分からの途中出場、ミッドウイークに中2日で行われたニュルンベルク戦では46分から出場こそしたもののこれといった活躍には到らず、完全に2得点を記録した清武弘嗣に話題をさらわれた。日本人ダービー3連戦が明けてのブレーメン戦ではベンチ入りこそしたが出場機会はなし。もっとも、振り返ればオマーン戦前も途中交代が続いており、ちょっとした試練の時が続いている。

 あらためて振り返ると、今季宇佐美はバイエルンからホッフェンハイムに移籍した。全くといって良いほど戦力として扱ってもらえなかったバイエルンからの移籍は、とにかく出場機会を求めてのこと。ホッフェンハイムでなら出場機会があるということは、もちろん確約されていないが、ある程度計算がたってのことだった。事前にもバベル監督からは、「U−17代表時代のプレーも日本でのプレーも、もちろんバイエルンでのプレーも見ている。2列目であればどこでも」と話があっての決断だった。チームとしても、主力としての見込みでの獲得だったわけだ。

現状を受け入れるも違和感はある

 キャンプ期間を経て、宇佐美の役割は2列目の左が定位置となった。右にはダイナミックかつテクニカルなドリブルが売りのフィルミーノが入り、チームとして攻撃の大きな起点となる。宇佐美の左サイドは、中に入って行くプレーよりもサイドに張り、ボールを受けてからのチャンスメイクが第一。中央へ入ってくるプレーはあまり良しとされず、選択肢としては2番目以下だ。縦方向よりも、ゴールへ向かうプレーにこそ威力を発揮する宇佐美にとっては少々窮屈でもあるが、それでも今季はいくつか好プレーを発揮してきた。特に第5節のシュツットガルト戦でのスーパーシュートなど、彼らしさと指揮官の欲するプレーとがうまくかみ合ったプレーも見せている。その一方で、いわゆる消えている時間が多いのも確かだ。中盤からの配球がない、もしくは少ない時間帯にそれを引き出す動きが少ないのかもしれない。周囲と噛み合ない時間帯などは、ライン際で上下動こそするが、完全に関わることができずにいることになる。これまでの宇佐美にも珍しくないことだった。
 
 それでも、そもそも試合に出場するためにホッフェンハイムにいる。レバークーゼン戦後のコメントからは、彼が今いる状況を受け止め消化しようとしながら努力している様子が伝わるように思う。

――ボルフスブルク戦でベンチ外、今日はベンチスタートだが。自分のことを考えたりしてしまうのか?

 まあ、1試合ですからね。去年のような感じでずっと外から見てると何かありますけど。(ボルフスブルク戦後、バベル監督は宇佐美にリフレッシュして欲しいと話したが)個人的にはあまり疲れは感じなかった。監督がそういって気遣い……なのかはわかりませんが、ベンチ外になりました。オレは全然やれるのになという感じでした。

――代表帰りでフィットが難しいのかなと?

 いやいやいや。そんなん、(代表召集でチームを離れたのは)3、4日ですし、全然フィットもしてますので、全然やれましたけどね。

――メンバー外と聞かされて驚いた?

 そうですね。監督に直接理由を聞きにいきました。それで、リフレッシュして欲しいと言ってくれたんです。(チームが)始動した最初のころはコンディションも良かったし、ロンドン五輪に行っていてあまりチームに合流してなかったことがありました。今回も帰ってきてすぐということで、一回リラックスしてほしいという感じでした。

――そのやりとりは通訳つきで?

 いや、外れて驚いたので自分ひとりです。

――「僕は疲れてないけど」って言ったのですか?

 言ってないです。監督がそう言ったので、その見方は聞こう(受け入れよう)と思いました。まあでも、疲れていても出されるくらいじゃないとだめだと思います。その結果、ベンチ外から(レバークーゼン戦は)ベンチメンバー入って後半ラストですからね。そこはちょっと、どういう感じなのかと思ってますけど。

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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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