石川遼、成績不振の前向きな理由
米ツアー本格参戦へ
来季から米ツアーを主戦場とする石川。今季挑戦した取り組みとは
来季から米ツアーを主戦場とする石川。今季挑戦した取り組みとは【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

 国内ツアーも終盤の三井住友VISA太平洋マスターズ(11月8日〜11日)で、2年ぶりの優勝を飾った石川遼。今季は国内ツアーで3度、米ツアーで8度の予選落ちを味わった。来季からは米ツアーが主戦場。苦しい1年を過ごした背景には、未来へ向けての取り組みがあった。

米ツアーで大事な、自分のスタイル

 昨季、米ツアー、欧州ツアーで賞金王に輝いたルーク・ドナルド(イングランド)は、何がすごいという突出した特徴を持っている訳ではない。が、5年ぶりの国内ツアー参戦となったダンロップフェニックス(11月15日〜18日)ではあっさりと優勝し、貫録を見せた。これには多くの日本人プレーヤーに少なからず衝撃を与えたはずだ。いや、衝撃というよりも、与えたものは“励み”だったのかもしれない。43歳で最年長賞金王になった藤田寛之も、それは認めるところだ。「飛距離も体格もあまり変わらないルーク・ドナルドが世界ランクの上位にいる。僕にもできないはずがない」と国内ツアー最終戦・ゴルフ日本シリーズJTカップの優勝インタビューで藤田はそう語っていたものだ。


 米ツアーに参戦した多くの日本人選手が、まず圧倒されるのが、そこで活躍している選手たちの飛距離だ。しかし、今季、ルークのドライビングディスタンスは280.1ヤードで170位。誰もがタイガー・ウッズ(米国)やロリー・マキロイ(北アイルランド)、バッバ・ワトソン(米国)のように飛ばすわけではない。2005年のQスクール(米ツアープロテスト)で7位通過した丸山大輔も「ものすごく飛ばす選手はいますけど、僕よりも飛ばない選手もいる。相手が飛ぼうが飛ぶまいが、みんな気になんかしてないんです。どんなゴルフをしていても、要はいいスコアを出すだけなんです」と気付き、シードを獲得する善戦を見せた。

 長年、米ツアーを転戦してきた尾崎直道も「タイガーと比べたら、オレなんか何も優れたものなんかない。でも、そこで自分を貫かないとアメリカでシードなんかとれない」と言う。

ドライバー優先路線からの脱却

 今年4月、マスターズでまさかの予選落ちを喫した後の石川遼も、「飛距離よりも正確性とコースマネジメントを優先する」とこれまでのドライバー優先路線からの脱却を口にしていた。これはまさに“ルーク作戦”である。しかし、コーチでもある父の勝美氏は、その路線変更に対して、「自分のものにできるまで、半年、いや1年ぐらいはかかるのではないでしょうか」と長期化を予想していた。


 例えば、これまで、2オンができないパー5でも、可能な限りグリーンの近くまで打っていたセカンドショットを、ピンまで100ヤード地点まで運んで、そこからバーディーチャンスを作る。

 簡単なようだが、常にピンを狙うゴルフを身上としていた石川にとって、あっさりと切り替えられるものではない。それが、ツアー終盤戦に至るまで、フェード、ドローを自在に操り「確実に上達している実感がある」(石川)としながらも、成績不振から抜け出せない一因でもあったように見えた。

 ショットの精度も高くなり、アプローチのバリエーションも増えた。だが、それが成績に反映されないのもまたゴルフだ。プロ入り初年度の08年、石川の平均ストロークは70.89で16位だった。09年にはそれが69.93となり1位。10年は69.92で4位。11年は70.09と60台を割って3位。そして今年は70.43で5位タイだ。

シーズン終盤に表れた「半年」の成果

 三井住友VISA太平洋マスターズでの2年ぶりとなる石川の国内ツアー優勝は、勝美氏の言う「半年」の成果だったのだろう。しかし、まだまだ完全に石川にとっての自分のゴルフと呼べるものにはなっていない。

 日本シリーズの3日目に石川は藤田と同組でラウンドした。手堅いように見えて、しかし、決して守りに入らない藤田のプレーは、尾崎直道が言う「自分を貫くゴルフ」を石川に見せた。

 3日目を終えた石川は「今日だけで言えば、藤田さんのほうがボギーを打っているんですけど、実際バーディーは藤田さんのほうがたくさん取っているんです。狙ったところにしっかり攻めているという印象を受けました」と語っていた。この日、藤田は6バーディー、4ボギー。石川は4バーディー、2ボギーでともに68をマークしている。


 来年は、米ツアーに本格参戦する石川にとっての目下の課題は、「スピンコントロール」だ。「100ヤードのところに残して、スピンコントロールして打つという攻めもできている」と言う石川。それをいかに成績に結び付けるか。「また4月に(国内ツアーが)開幕するまでの3カ月とか4カ月の間に良いニュースを海外から届けられるためにも、頑張っていきたい」。そう言って、今年の日本ツアーを締めくくった石川からの朗報を待ちたい。


<了>

久保田千春

1948年東京生まれ。長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。91年から今も続く週刊ゴルフダイジェストの連載「ノンフィクションファイル」を立ち上げ担当して編集作業を行う傍ら自らも執筆。フリーとなった今も同連載に寄稿している。2007年にアマチュアだった石川遼のツアー優勝以後、石川勝美氏の依頼により「バーディは気持ち」の編集作業を担当し、その過程で石川家と親しく交流するようになった。それが縁となり武蔵野千のペンネームで週刊ゴルフダイジェスト連載の「遼くん日記」の原作を08年から12年まで執筆。現在は同誌で「迷ったとき、ユハラにかえれ!」を執筆中。91年に当時のツアーオブジャパンの依頼で日本ゴルフ雑誌記者協会を創立し、ゴルフダイジェストを退職した08年まで同協会会長を務める。また、ここ20年ほど世界ゴルフ殿堂に委嘱されインターナショナル部門の選考も行っている。

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