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「監督交代はチェルシーの現状を物語っている」
前園真聖氏が語る、2012年クラブW杯見どころ
クラブW杯について語る前園氏。自身もブラジルでのプレー経験があるだけにコリンチャンスを応援しているようだ
クラブW杯について語る前園氏。自身もブラジルでのプレー経験があるだけにコリンチャンスを応援しているようだ【宇都宮徹壱】

 いよいよ今週から開幕するFIFAクラブワールドカップ(W杯)。だが去年と比べて、サッカーファンの間で話題に上る機会が少ないように感じるのは、私だけではないと思う。思えば去年のクラブW杯は、非常に強くて魅力的なサッカーを展開し、絶大な人気を誇るFCバルセロナが出場していた。ゆえに「バルサとその他大勢」という構図で、十分に大会の魅力が成立していたのである。


 しかるに今大会の欧州チャンピオンは、チェルシー。テリー、トーレス、オスカル、アザール、チェフらを擁するスター軍団ではあるものの、バルセロナのような世界的な人気クラブとは言い難い。対する南米チャンピオンのコリンチャンスも、ブラジルを代表する人気クラブではあるものの、意外にもコパ・リベルタドーレスを制したのは今季が初めて。残念ながら、日本のサッカーファンになじみ深いクラブというわけではない。他の大陸チャンピオンについては、言わずもがなであろう。


 とはいえ、クラブW杯はもちろん「バルサあっての大会」ではないわけで、少しばかり視点を変えてみれば、いくらでも新たな発見はあるはずだ。それに今大会が終われば、今度いつ日本でクラブW杯が開催されるか、今は未定だ(次の開催国はモロッコに決まっている)。となれば今大会をいかに楽しむべきかを、日本のサッカーファンはまず考えるべきではないだろうか。そのヒントを探るべく、元日本代表で解説者の前園真聖さんにお話をうかがうことにした。

クラブW杯で印象に残っているのは06年のバルセロナ

――“クラブ世界一を決める大会”というのは、クラブW杯の前史として“南米王者対欧州王者”によるトヨタカップがありました。前園さんにとっても、やはりトヨタカップのイメージは強烈だったと思うのですが、いかがでしょうか?


 そうですね、一番インパクトがあったのはプラティニのユベントスの時(1985年)ですね。ボレーシュートが取り消された時のプラティニのふて腐れた感じとか。あと、雪の決戦となったFCポルト対ペニャロールの試合とかすごく印象的です。他には、横浜フリューゲルスでチームメートだったジーニョや、Jでもプレーしていたレオナルド(元鹿島アントラーズ)やロナウド(元清水エスパルス)がいたサンパウロが、ACミランを倒した時(93年)も印象深いです。


――マラドーナ好きの前園さんは、やはり欧州よりも南米のクラブにシンパシーを感じますか?


 もちろんそうですね(笑)。トヨタカップが始まった当時から応援していました。今でこそサッカーのスタイルも変わってきましたけど、やはり個人での打開の部分やゴール前でのアイデア、イマジネーションという部分で、南米のスタイルはすごく好きだったので、自然と応援してしまいますね。


――05年大会から、欧州と南米以外の大陸チャンピオンも参加するフォーマットになりました。最も記憶に残っている大会は?


 06年のロナウジーニョがいたころのバルセロナですね。優勝できなかったけど、あのころのロナウジーニョのプレーが大好きでしたから。欧州チャンピオンズリーグ(CL)とは違って、チームというよりも個の選手を見てしまうというところが、クラブW杯にはあります。そこに大会としての特徴というか、魅力を感じますよね。

チェルシーは“良い時”のトーレスに注目

――さて今回のクラブW杯も、欧州と南米のクラブが決勝で顔を合わせる可能性が非常に高いわけですが、前回大会のバルセロナのような圧倒的な存在がいません。そんな中、それぞれの大陸王者の特徴について語っていただきたいと思います。まずチェルシーについて、前園さんはどんな印象をお持ちでしょうか?


 チェルシーに関しては、すごい選手が集まっているけれど、監督がディ・マッテオからベニテスに交代して、選手の顔ぶれも変わるなどいろんなことがあり、一時期のような強さは感じられませんね。ただ、今は選手の柔軟性があって、攻撃のパターンもひとつじゃないので、そういう意味で楽しみです。


――確かに選手個々で見ると、非常にタレントがそろっているわけですが、特に注目の選手は誰ですか?


 そうですね、僕は“良い時”のトーレスはすごく大好きなんです(笑)。すごく苦しい時期も過ごしてきて、今年のユーロ(欧州選手権)では爆発しました。監督が信頼して起用すると、良いパフォーマンスを出すタイプだと思います。ポストプレーも、自分で突破することもできるし、柔らかさと強さも兼ね備えているという意味でも良いストライカーですし、中盤もメンバーがそろっているのですごく面白いと思いますね。


――その中盤には、オスカル、ファン・マタ、アザールという若くしてそれぞれのA代表で活躍する選手をそろえています


 そうですね。彼らのような若い選手で中盤が構成されているところに、今のチェルシーは作り上げている過程という印象を受けます。オスカルなんかも、プレミアに来た当初は線が細くて華奢(きゃしゃ)な感じだったので「通用するのかな?」と思っていたんですが、普通にプレーしていますからね。


――今ではセレソン(ブラジル代表)の10番ですからね。ベルギー代表のアザールとスペイン代表のマタについてはどうでしょう?


 アザールも見ていて面白い選手ですね。ボールを持つと、何かしそうな感じがしますし、推進力を持ってゴール前まで仕掛けていく選手は、相手にとっては嫌なタイプでしょう。もうひとりのマタは、すごくバランスを取っている感じ。この3人が攻撃でかみ合えば、チェルシーの前線はどのチームにとってもかなり脅威になると思います。


――前園さんは現役時代、攻撃的なポジションでプレーされていたということもあり、DFやGKの選手も「自分が対戦したらどう攻略するだろうか」と想像しながら試合を見るかと思うのですが、いかがでしょうか?


 見ます、見ます。DFはマッチアップした時のことを想像しながら見ますね。その意味でセンタ―バックのテリーなんかは、嫌なタイプですね。ポーカーフェイスで、スマートに見せておいて汚いことをやる感じ。日本でいうと、現役時代の井原(正巳)さんみたいな感じです(笑)。


――なるほど(笑)。GKのチェフはどうですか?


 経験もあって素晴らしいGKだと思います。ただし全盛期を過ぎたのか、最近はミスが多いのが気になりますね。非常に経験が必要なポジションではありますが、もっと若いGKが出てきてもいいのではないかとも思います。


――そうした中、このタイミングで監督がベニテスに変わったことについては、どうとらえていますか?


「このタイミングで良かったのかな?」と疑問に思うところはありますけど、それもビッグクラブの宿命なんだとは思います。ただ、監督がすぐに変わるということは、チーム状態が決して良くないことを示しているわけで、そこは今のチェルシーの現状を物語っているのだと思います。


――そんな中、チェルシーに有利な点を挙げるとすれば、どんなところでしょうか?


 若い世代の選手がポテンシャルを持っていることですね。大会を通して波に乗れば、彼らのダイナミックなサッカーが見られるのではないかという期待はしています。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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